PASTEL RECORDS

「好奇心とやすらぎの音楽」というキーワードで、エレクトロニカ、フォーク、アコーステックを中心に世界のインディペンデント・ミュージックを紹介しております。

Satomimagae「Kemri」〜Satomimagaeにしか生み出せない幻の風景

   


アコーステックギターと歌、そしてフリーフォームなサウンドエフェクトを駆使し、生みだされる独特のサイケデリア。東京を中心に活動をする、Satomimagaeを知ることができたことは、PASTEL RECORDSをやってて、良かったなぁ〜と思う、数少ない嬉しい出来事の一つとも言えます。

2012年のデビュー作「awa」は、ネオ・アシッド~フリー・フォーク隆盛の頃を思い起こさせる、乾いたアコーステックギターと歌、そしてそれらを飲み込むような、フリーフォームなサウンドエフェクトを駆使し、生みだされる独特のサイケデリアから、当時の自分の表現したい音楽を真っすくチャレンジして、模索している葛藤が表れた作品とも言える作品だったかもしれません。

確かなソングライティングと、印象に残る、日本語詩ながらも非J−POPな佇まいに、どこか冷めた目で囁くように、そして突き刺さるように響く歌唱。このファースト作の混沌としたざわめきからは、彼女のただならない才能がビシビシ伝わってくる。誤解のないように伝えたいのが、このファースト作、かなり念入りに作りこまれ、ただ単に彼女の豊かな実験性が意欲的に織り込まれた作品というわけでは決してないということ。彼女にとっては、歌もギターも、サウンドエフェクトも全て同列で自身のイメージを、現実に投影しようとしていた…と私は勝手に解釈している(それはSatomimagae最新作「Kemri」に、見事に結実している)。

また、同年、堀内博志監督の映画「耳をかく女」のサウンドトラックを担当、8曲入CD-Rをリリースしています。サウンドトラックというフォーマットとSatomimagaeの音楽スタイルとの相性の良さを感じる作品なのですが、基本、彼女のギター歌を中心とした、セカンド作につながる音数を少なくした録音で、歌心がすっと染み入る作品です。

そして2年後の2014年に、セカンド作「Koko」を、自主制作ではなく、chihei hatakeyama主宰の、White Paddy Mountainからリリースしています。なんというか、明確な理由はないんだけど、なるほど〜と納得したレーベルからのリリース。「"Koko"は"awa"よりも入っている音は少ないですが、ギター以外の音があって初めて成り立つような、フォークに括られない、より自由な曲を目指したものが多いです。」リリース時に、メールで連絡をくれた時に、彼女が教えてくれた言葉を思い出します。スタジオ録音に変わり、儚くも、まっすぐ伝わってくる歌を中心に、幾重にもヴォーカルを重ねたり、エフェクトを加えたり、ヴォーカルの奥行きにも配慮した、ミックスは、やはりスタジオ録音ならではの成果を生み出していて、浮かび上がる母性のようなものと美しく繋がっているような、またひと段階成熟した芯の強い作品になっています。作品には歌詞カードが入ってないみたいですが、ダウンロードできるようになっていますので、ぜひ参照しながら作品の世界を心合わせて浸ってみてください。

▼「Koko」歌詞ダウンロードは、White Paddy Mountain作品紹介ページより
http://whitepaddymountain.tumblr.com/post/103035320463/title-kokoココ-artistsatomimagae-サトミマガエ-発売日

そして2017年届けられた、最新作「Kemri」は、セカンド作に引き続き、White Paddy Mountainから。それにしても今作『kemri』はホントに素晴らしかった!美しい混沌さが広がる空間のなかに、これまで以上に成長が実感できる、親密さが増した楽曲。間違いなく彼女の代表作の1枚となる作品ですし、素晴らしい逸材であることが、作品となって示してくれたことが個人的には本当に嬉しかったです。

今作で耳についたのが、あえてギター以外の音での表現を意識し、また、極力音数の少ない内容の作品だったセカンドでの制約から解放されたかのような、ブルージーなギターの佇まい。これが虚空と現実の距離感のバランスを絶妙にとっている。そして彼女の特徴の一つである、サウンドエフェクトを駆使した音響空間も、日本のアンビエントミュージックを代表する音楽家であり、White Paddy Mountainのオーナーでもある、chihei hatakeyamaが3曲に、ミックスなどほぼ半分以上に参加しており、ヴォーカルを含め、かなり細やかで大胆なエフェクト処理が施されています。ただ、これが本当に雑多な感じではなく、シンガーソングライターの作品にはない、サウンドスケープの、混沌とした美しさが、歌、楽曲、サウンドと等しく一体となって聴き手に問いかけてくる。ライヴ感をキープさせながらも、丹念に時間をかけて作り込まれていった作品であることは、本作を聴いていただくとよくお分かりいただけることだと思う。

変にまとまらず、Satomimagaeの持つ多様性が、作品をリリースする度に、豊かな魅力となって磨き込まれ、この作品へとたどり着いたかのような、そんな積み重ねの大切さを感じさせますし、Satomimagaeにしか生み出せない幻の風景がこの作品に広がっているのです。

<収録曲>
01. Bulse
02. Odori
03. Leak
04. Mebuki
05. Tenjoh
06. Kata
07. Fumi
08. Ato
09. Onami
10. Clashi
11. Sara








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