Biosphere「Dropsonde」(Biophon Records)


ノルウェーのエレクトロニック・ミュージック界で最も重要なアーティストの一人として広く知られている、BiosphereことGeir Jenssenが2006年にUKのTouchよりリリースしたアルバム『Dropsonde』が7曲の未発表曲を追加し、Biosphereのレーベルより再発されました。

20年近くに及ぶキャリアの中で、これまで音響レーベルTouchを中心に、Smalltown Supersound、Rune Grammofonといったレーベルから作品をリリースしていましたが、近年では、新作もリリースしつつ、自信のレーベルBiophon Recordsで、Biosphere名義の過去の作品を、リイシューする流れが目立ちます。アンビエント作家的な立ち位置で紹介されることが多いのですが、1990年代初頭、彼はいわゆる「アンビエント・テクノ」のスタイルで知られ、ダンスフロアーで鳴らされるような、ミニマルなリズムトラックの印象もあります。1994年発表のセカンドアルバム『Patashnik』収録の”Novelty Waves”はリーバイスのキャンペーンとしても使われています。

現在のアンビエントスタイルに変わり始めたのが、1997年発表の『Substrata』からでしょうか。”北極圏の音”と呼ばれる彼の生み出すサウンドは、壮大な美しさの中に、何か見えない危険が潜んでいるような、メランコリックなだけではなく、時に不吉なエッジを持った、深い低音のドローンに包まれるのですが、これが、不思議と心地よくも感じてしまうサウンドなのです。強いていえば、Wolfgang Voigtによるアンビエント・プロジェクト、GASにも近い感じもします。そういえば、彼は登山家でもあるので、過酷な体験も音楽に反映されているだろうなと想像してしまいます。

そんな流れの中で、「Dropsonde」は、ちょっと他の作品とは異なった趣の作品かもしれません。いくつかのトラックでは、メロディックなループや微妙に重なりあう音へのこだわりは変わらないものの、ジャジーなドラムとシンバルによるアップビートなメロディック・ループが使われていて、彼のサウンドに、新しい方向性を示す作品となっています。リズムは躍動感がありながらもミニマルに一定で、ゆっくりと引き込まれていく内容は、これまでの作品にない親しみやすさかもしれません。とはいうものの、これ以降の作品では明確にわかるジャズのアプローチは聴かれないのですが。

 

01. Dissolving Clouds
02. Birds Fly By Flapping Their Wings
03. Warmed By The Drift
04. In Triple Time
05. From A Solid To A Liquid
06. Arafura
07. Fall In Fall Out
08. Daphnis 26
09. Altostratus
10. Sherbrooke
11. People Are Friends
12. In The Shape Of A Flute
13. Fair Winds For Escort
14. Windscale Piles
15. Insolate
16. La Caldera
17. Birds Fly By Flapping Their Wings v2
18. Warmed By The Drift v2
19. Lost Horizon

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