Grouper 『Grid of Points』(kranky)

感情的な静寂に織り込まれた脆く崩れ落ちそうなハーモニー

前作『Ruins』で、こちらがびっくりするくらい、美しい歌唱に焦点を当てた作品をリリースしている、Liz Harrisによるソロ・プロジェクト、Grouperの4年ぶりとなる最新作『Grid of Points』がひっそりと(あくまで個人的印象ですが)リリースされています。実際のところは、Grouperは日本と違い、海外では人気の高いアーティストなので、その温度差はなんともいえないもどかしさを感じるところではあります。

また、Liz Harrisは、音楽だけでなく、アート方面も非常に評価が高い(HP)。むしろ、彼女にとって、音楽も、絵を描くことも彼女の中では境界線がないのかもしれない。『Grid of Points』は、アートとレコーディングのために ワイオミング州を訪れていた時に、「欠けているものや冷たいもの」というアイデアからインスパイアされて、ピアノとヴォーカルだけの小曲集を1週間半で書き上げたという作品。病気によって突然レコーディングが中断されていますが、そのタイミングで作品を完成としています。そんな理由もあって、約22分の短い作品という、どこか空虚さも聴き終えた後、ほのかに感じる部分もあるのですが、そんなところもGrouperらしくも感じます。

冒頭、短いながらも、何層にも重なる親密でフラジャイルなヴォーカは、まるで聖歌のように現れて消える。やがてLiz Harrisは、ミニマルなピアノとともに、切なさがぎゅっと濃縮されたような、メランコリックなメロディーを、しっとりと歌い上げてゆく。『Ruins』以上にメロディアスで、そしてなんら飾り気のない歌唱。

ぼんやりと彼女のピアノと歌にうとうとしていると、ふいに、汽車か何かの通り過ぎる音が現れ、ゆっくりとゆっくりと、フェードアウトしてゆく。辺りが静寂に包まれてから、ようやく作品が終わっとことに気づく…。そして、脆く崩れ落ちそうなその美しさとともに、何ものにも代えがたい言霊のようなものが、作品が終わった後も、ぐるぐると宙を彷徨う。

01. The Races
02. Parking Lot
03. Driving
04. Thanksgiving Song
05. Birthday Song
06. Blouse
07. Breathing

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