Goldmund『Occasus』(Western Vinyl)
夕暮れ時の心地よい感傷を慈しむピアノアンビエント。
Keith Kenniffのプロジェクト、Goldmundの最新作『Occasus』がリリースされました。アルバムタイトルにもなっている、Occasusは、ラテン語で夕暮れ意味する言葉で、地球を巡る太陽の軌道や空気を題材にしたサウンドトラックとも言える作品で、大気に溶けてゆくような、相変わらずの美しいピアノを聴くことができる。
Goldmundはもう説明しなくてもいいくらい、日本でもたくさんのファンは多い。ハウシュカ、ダスティン・オハロラン、そして坂本龍一のような、ピアノを中心とした、クラシカルでアンビエントな作品を生み出す、傑出した作曲家の一人に彼は名を連ねているけれど、他の作曲家にはない、親しみやすさがあって、それが作品ごとに、ますます強くなっているようにも感じる。
ペンシルべニア在住のキース・ケニフの、ゴールドムンドに対するサウンドは、作品をリリースするたびに、徐々に甘美なメロディーは研ぎ澄まされたものとなり、多くを語らずとも、ゆっくりと謙虚な心で放たれる1音の調べのなかに、私的で深遠な感情が深く刻まれている。「Occasus」を聴くと、それ以前の作品がどうも喋りすぎなようにも感じてしまうくらい。
今作では、ピアノ/シンセサイザー/リバーブなどを使用し、美しいピアノの響きに加え、ニューエイジなシンセサイザーのサウンドが作品に神秘性を加えている。モノクロなノスタルジアとの混ざり合いながら、アンビエントを意識した作品は、彼の別プロジェクト、Heliosのような独特の淡い浮遊感をもった、シンプルながらも美しい幻想的な風景が見えてくるもので、前作「Sometimes」よりも、より一層深くなっている。メロディアスなピアノよりも、”不完全な美への追求”という、彼の持つ美意識に導かれたピアノの断片に、重厚感あるシンセや弦楽器が、シリアスに包み込む。
ただ、そんな中でも「Occasus」は、不思議と感情的になり過ぎていないところもまたGoldmundらしく、混沌としていながらも、審美性を深めたともいうべき感情的知性があり、少し重いと感じられる楽曲の後にも、必ず美しいピアノを持ってきている。その辺は、いい意味で、すごくコマーシャルに長けた人だと思うし、それが彼の個性でもある芸術的バランスにつながっているわけで、作品の構成自体もすごく練られていて、聞き手は心地よい感傷に、安心して浸ることができるのではないでしょうか。
01. Before
02. Above
03. Bounded
04. Breaking
05. As You Know
06. Circle
07. History
08. Migration
09. Radiant
10. No Story
11. Thread
12. Terrarium
13. Turns
14. Moderate
15. What Lasts