Richard J. Birkin「Vigils」〜甘美な陶酔感と共に紡がれる、祈りのメロディー
以前、このサイトの方でもご紹介した、かつてはエンフェメトリー名義で作品をリリースし、今年、ソロ名義で、音楽と詩のコラボレーション「Songs For Spoken Words」を発表していた、UKダービーのミュージシャン、Richard J. Birkinが、初となるフル・アルバムをリリースいたしました。
ヨハン・ヨハンソンやダスティン・オハロランなどのライヴで活躍し、レディオヘッド、ジェイミーxx、ヴァンパイア・ウィークエンドとのコラボレーションで知られる実力派弦楽団イスクラ・ストリング・カルテットと、デルヴェンティオ・カルテットによる弦楽四重奏を中心に、バーキン自身が奏でるピアノ、アコースティック・ギターとが絡み合う優雅なアンサンブル。
ノッティンガム市議会からの委託によるインスタレーションのための作品「Night Sun」や作品全体のテーマなどは、とても心締め付けられるようなものなんですが、ただ彼の奏でる音楽には重苦しい重厚感のようなものはなく、幾つかは、Goldmund、ダスティン・オハロランを思わせる、感傷的なピアノだったり、爪弾くアコーステックギターの美しい響きとストリングスとが牧歌的に結びつき、まるでシンガーソングライターの歌モノ作品のような歌ごころあるメロディーが、アルバム通して連なっていて、まるで祈りのメロディーように聴き手を後押ししてくれている。
特に、唯一のヴォーカル・トラックである「Moonbathing」はこの作品のハイライトと言ってもいいくらい、聴くものの胸に印象深く迫ってきます。感傷をそっと撫でるような爪弾くアコーステックギターから始まり、ストリングスとともに、一定のメロディーが繰り返される、徐々に膨らむ感情をぐっと抑えながら、やがて、ルーファス・ウェインライトを思わせる歌声がそっと入ってくる。メロディーが繰り返される展開は変わらず、再びストリングスや、コーラスが加わり、甘美な陶酔感で包み込む…。
まだRichard J. Birkinは、多く知られている存在ではないですが、Tamas Wells、Radical Face、Scott Matthewなど、多くのサッドソングを日本で紹介している、Liricoも、ゴールドムンドと比肩する内容と、自信を持ってプッシュする確かな逸材です。近年のリリースペースからして、今後ますます注目の存在となることでしょう。
01. Atomhög
02. The Human Voice
03. Accretions
04. Vigil I
05. Vigil II
06. Vigil III
07. Moonbathing
08. A History Of Good Ghosts
09. Night Sun
10. Vigil V
11. Vigil VI
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Federico Durand & hofli「Niebla y jardines tomados por las plantas」(spekk) Sebastián Macchi、Claudio Bolzani、Fernando Silva「LUZ DE AGUA」 詩的イマジネーションの豊かさが表れた、Jacob Pavekのセカンド作「Illume」 Stefano Guzzetti「Escape(music for a ballet)」〜懐かしさ、憂鬱と希望といった心模様を反映させたポストクラシカル作 Directorsound「Into the Night Blue」〜まるで忘れ去った素敵なひとときを思い出させてくれる月夜のメロディー。