hofli発掘音源&新作フィールドレコーディング作品!

これらのフィールド録音は、すべて空気の精妙な動きにマイクの矛先を向けたものである。野生生物の発する様々な音も入ってはいるが、焦点を当てているのはそこではない。また人間が発する音もカットせずそのままにしてある。くれぐれも「ネイチャーサウンド」のようなものを期待しないように。フィールドレコーディングを情景描写とは考えない。そこにすでにある名付けられない音とその響き、その変化に注意を払うことによって、その場に身を置いた場合に全身体的に知覚されるであろうことを想像することができる。この野性の想像力を私は信じている。

ここ数日の間に、hofliの音源が立て続けに、bandcampでリリースされている。最新録音の「something subtle, only you might have noticed」のページでは、上記の津田さんの説明が添えられている。

フィールドレコーディングは、とても生々しい。私は、録音されたその驚くほどの奥行きと情報量の多さは、一旦耳を開いてしまうと、どこまでもその世界に浸ってしまうし、正直、底が見えない怖れすら感じてしまう魅力を感じる。人が何気に感じる以上のものが、フィールドレコーディングだと。しかし、その一方で、単に、究極のリラクセーション・サウンドとして販売されているようなものが、フィールドレコーディングとして認識されていることの方が多い。

なので、hofliのファールドレコーディング作を、ただなんとなく心地よい環境音楽なのかな?と、間違って仕事中のBGMとして流してしまうと、きっといつまで経っても、大自然との一体感を感じることができず、心地よい旋律は聴こえてはこない。だけど、hofliのフィールドレコーディングには、これまでの経験では測ることのできない面白さに満ちている。そして、それは、一度音の向こう側に入ってしまえば、癒しではなくて、様々な妄想をかき立ててくれる。「something subtle, only you might have noticed」には「絵」や「物語」といったものがない代わりに、作為がなく、自発的な行動が及ぼす秩序が収録されているからなのかもしれない。

ふつうは虫とか鳥とか波の音とか、わかりやすい音を切り取ってきますよね。それとは逆に、目立つ音がなく、その向こうにずっと鳴っているざわめきが聴こえてくるシーンを切り取ってきたんです。ふつうはそんなシーンは”音量上げるとザーッといってるだけ”と言われると思うんですが、その「ザーッ」のなかに色々聴こえるんですよね。静寂というと音がないことだと思われがちなんだけど、そうじゃないんですよ。

津田さんは、「something subtle, only you might have noticed」についてメッセージを送ってくれたけど、これまでのhofli作品にも、当てはまるような気がする。

そして、『Flotsam Jetsam』は、1996年から2004年までに録音された音源でまとめられている。2013年にリリースされている『LOST AND FOUND』とも録音時期が重なっていて、この辺の状況については、以前、津田さんにインタビューした記事を是非ご参照を。

『Anima』『plankton』の作品については、以下、津田さんの解説を是非。

2004年にCD-Rで発表した『Anima』は、八重山諸島でのフィールドレコーディングをmax/mspで組んだパッチ(チューニングしたパラメトリックEQのようなもの)でプロセス。ある環境の定在波のようなものが抽出できるんじゃないかと考えていた。のちに楽曲の素材として使い別のアルバムに収録した部分もあるが、もっとも「生(raw)」な作品と言えるのがコレ。2001年作『plankton』は、エレクトリックギターの演奏をSoundEdit16の波形編集だけでカットアップ/コラージュして気合で作った。顕微鏡の焦点を合わせるときの、様々な縮尺の見え方を走査していくような感覚のことを考えていたと思う。『游音』のライブ会場のみCD-Rで販売していたものだが、デジタルリリースに際してほんの少しEQ調整。

hofliはもともと匿名ユニットのつもりで始めたしライブより音源の作り込みとインスタレーションとしての展開を考えていた。当時ジャケットも自分でデザインして紙を切ったり折ったりして作っていた。トレーシングペーパーにホワイトの文字というのがやりたくて、それだけのためにALPS電気のインクリボン式マイクロドライプリンタを買い、それこそ使い倒しまくったのだった。イラレもフォトショもSoundEdit16もタダで使えていた時代。

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