Henning Schmiedt「Klavierraum, später」(flau)

2007年に発売され、大きな衝撃を持って迎えられた旧東ドイツ出身のアーティストHenning Schmiedtによるソロ・ピアノの名作「Klavierraum」。妊娠中の妻が暑い夏を心地よく過ごせるように…との作品背景もこの作品のセールスを後押ししたところもあるけれど、発売当時、ホントよく売れた。

過去の作品レビューでも書いたかもしれないけど、個人的な意見として、「Klavierraum」は、本当にリリースされる時期が良かったようにも思う。90年台後半から盛り上がってきたエレクトロニカというジャンルが、よりオーガニックで、アコーステックな流れに進みつつある中、1曲目の”240 G Mehl”の一瞬で引きつけられてしまう、即興的で鮮やかなピアノが始まったと思いきや、一瞬の空白が訪れ、ふわ〜とエレクトロニクスのアンビエントな空間に包み込まれる。再びクラシカルな感性と鮮やかなピアノの演奏が解き放たれ、また一瞬の空白。それが幾重にも繰り返されるわけですが、直ぐに、これはヤバイ!なんなんだ〜とサンプル音源を聴かせてもらった時に驚いた記憶がある。この作品には、他の作品にない耳の肥えた音楽ファンも、そうでない人も、両方取り込む魅力がある。

そんな作品のリイシューにあたり、アルバムの同セッションを録音した同名のスタジオKlavierraumより、多数の未発表曲が発見されることになるのですが、これら楽曲を、新たに編集・構成し、「Klavierraum」の続編として作品「Klavierraum, später」が生まれることになった。

これが予想以上に良かった。本当に未発表なのかと思うくらい。「Klavierraum」の前半〜中盤部分のエレクトロニクスの印象が強いけど、実際に、中盤から後半にかけての、アコーステックピアノだけの、メロディアスな静寂の中に、繊細な感性が波紋のように広がる美しい演奏も聴きどころなのだけれど、その演奏をさらに、慈愛深くしたような、グッとくる演奏が堪らなく良い。この感覚は、最近の作品から現れたものかと思ったのだけれど、この時からこんな演奏してたのかと思うと、今はより自然体で音楽に向き合えているのかな。

さらにアルゼンチン音響派の代表的な存在として知られるMono Fontanaが「Cribas」以降を感じさせるピアノ+フィールド・レコーディングによって、「Klavierraum」収録の「du und ich」を再構築したカバーを披露。またMusic From Memory、L.I.E.S.からのロウハウス〜アンビエント諸作で注目を集めるNYのTerekkeによるリミックスが収録されている。

01. 1 Bio Ei
02. Prise Meersalz
03. Becher Milch
04. 2 Reife Mangos
05. Mit dem Schneebesen!
06. Goldbraune Unterseite
07. Kaffee Aufs Tablett
08. Guten
09. Morgen!
10. 3 Teelöffel Backpulver (Terekke Remix)
11. du und ich (Mono Fontana Reinterpretation)

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