Aaron Martin「Touch Dissolves」(Iikki)

息吹のようでありながら、芯の深くに心模様が映し出された演奏

カンザス州トーピカ在住の、アーロン・マーティンは、個人的に好きな音楽家の一人。11歳でギターとドラムを始め、17歳でチェロを始めた彼は、そのマルチな演奏力を生かし、作品を発表してきた。

とりわけ、チェロの演奏や、ストリングスアレンジに彼独特の個性が表れていて、長年彼の演奏を作品通して聴いていると、凡庸なモダンクラシカルのストリングスアレンジとは全く違ったアーロン・マーティンの息吹のようでありながら、芯の深くに心模様が映し出された演奏は、いつも聴き手を裏切らない。

Eilean Recを主宰する、Mathias Van Eeclooが2016年に始めた、ヴィジュアルアーティストと、音楽家とのコラボレーションを進めるレーベル、Iikki Booksから、トルコの写真家 Yusuf Sevincli(ユスフ・セヴィンチュリ)とのコラボレーション作品「Touch Dissolves」もまた、アーロン・マーティンのディコグラフィーの中で代表する1枚となっている。

ゆったりと叙情的な音質で織り成すチェロの演奏によるドローンサウンド。彼のチェロには、美しい衝動が落とし込まれていて、聴き入っていると時折、深く抉られる瞬間がある。重厚だけど、重苦しいとはまた違う。牧歌的なウクレレの響きとオルガンのコントラストがまた神秘性を湛え、幻想的なムードを演出していて、やがて旋律が幾重にも織り成し、それらが漆黒の闇に広がってゆく。その高揚感がいくつも表れ消えてゆく。儚い余韻がまた良い作品です。

01. A Child’s Arms Are Moonlight
02. The Space Above Overflowing
03. Water Reads What Fingers Have Written
04. Falling from the Feet of Sunlit Bodies
05. To Stems Unclasped the Petals Cling
06. Guarded Eyes Make Curtains Blossom
07. A Hand That Reaches, A Branch That Sings

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