Padang Food Tigers & Sigbjørn Apeland「Bumblin’ Creed」
無限の時間を奏でるハーモニクス
無限の時間を奏でるように、Padang Food Tigersの音楽は、幽玄な響きを湛える…。UKのStephen LewisとSpencer Gradyによる、Padang Food Tigers。Loren Connnors, Bruce Langhorne, Mick Turner, Scott Tuma, Derek Bailey、そして秋山徹次に影響を受けている彼らは、アコーステックギターによるスライドギター、バンジョー、フィールドレコーディングを用い、ブリテッシュフォークグループとは思えない、どちらかといえば、アメリカ南部の架空の土地を描くような、穏やかで、ほんのり感傷的なサウンドトラックを聴かせてくれるグループです。
これまでは、Under The Spire Recordings, Blackest Rainbow, Bathetic, Scissor Tail Editionsからリリースされていて、ジャケットがかなりエクスペリメンタルな作風をイメージさせるものばかりなのですが、前述の通り、ドローンとフォークの中間のような、実験的なスタンスながらも、本当に聴き心地の良い音楽なので、ぜひジャケットに惑わされず聴いていただきたいのですが、その最初としてオススメなのが、ノルウェーの足踏みオルガン/ハルモニウム奏者Sigbjorn Apelandとのコラボレーション作「Bumblin’ Creed」です。
Sigbjorn Apelandは、民族音楽学博士号を取得するなど、ノルウェー民族音楽を研究しながら、世界的に有名なノルウェーのヴァイオリニスト、Nils Øklandとの共演作を含め、数多くのコラボレーションを行なっていて、その作品は、ECM、Hubro、Bathetic、Scissor Tail、Blackest Rainbowなどからリリースし、日本にも来日経験があります。
リリース先は、NYのレーベルNorthern Spyより。少ない音数ながら、ギターの開放弦と、スライドによるラーガなムードは、瞑想しているかのように穏やかで優しく、Sigbjorn Apelandのハルモニウムは、教会や民俗音楽の伝統に由来する音の波とともに、各メンバーの奏でる音それぞれが、調和してく様は、まさに至福のひと時。何か明確なメロディーを主張するわけでもなく、ただただ、全てがスローモーションに、セピア色のトーンが聴くものを包み込んでゆく。失われた何かや、やりきれない思いをそっと癒すように、淡々と奏でられるスライド・ギターが、たまらなく切なくて、美しい。目をつぶって睡魔が襲ってくるのを覚悟で浸りたい作品です。
Tracklist
01. Saroyan’s Appeal
02. Bumblin’ Creed
03. Forgiving You, Sammy Grayling
04. Ishmael’s Place
05. Barely A Breath In Your Parenthesis
06. It’s In Thee, Frittering Away
07. Powys’ Pocket Paperweight Game
08. Flåmsbana
09. Twin Hither