nous (Marie Séférian and Henning Schmiedt)「je suis」(flau)
鮮やかな虹を描き、ときに、優しい郷愁に包まれるコラボレーション
ドイツのピアニスト、ヘニング・シュミートが来日時に話していた、女性ヴォーカルとの作品がリリースされた。その女性ヴォーカリストは、Marie Seferian(マリーセフェリアン)で、これまで、MARIE SEFERIAN QUARTETT名義で、2010年から精力的に作品をリリースしていて、2018年の「KHALIL & MAY」が最新作となるのですが、優雅な気品漂う佇まいと、伸びやかで甘美な歌は、本当に素晴らしかった。
作品そのものは、レバノン出身の詩人カリール・ジブランとメイ・ジアデのテキストと詩を使った2人のプラトニックな愛を描いたもので、若干好みが分かれるかもしれないけれど、コンテンポラリー・ジャズの範疇のなかで、作品を重ねるごとに、表現の幅と共に、彼女の歌い手としての魅力が成熟しているのを感じます。
さて、ヘニング・シュミートとのコラボレーション、nousでは、想像以上に彼女の前衛性が淡く不思議な浮遊感に包まれ可憐に舞っている。ピアノ・ソロ作品のイメージが強いヘニングシュミートですが、このプロジェクト作品を聴くと、作品に対する自我をうまくコントロールできる人なんだなと、改めて彼のプロ意識の高さを感じる。シャンソン、ジャズと、多様な側面を見せるマリーセフェリアンの歌声を生かしながら、2人の表現が鮮やかな虹を描き、ときに、優しい郷愁に包まれる。相変わらずのヘニングさんらしい、繊細なピアノがありながらも、この作品は、あくまで2人のコラボレーション。歌や、ピアノ、ハーモニウム、エレクトロニクスのテクスチャが、ゆっくり、ゆっくりと聞き手の心を満たしてくれる。アルバムのリード曲とも言える、”maison”では、「Spazieren」収録”nach hause”の一部を引用したオルゴールに合わせて、マリーセフェリアンが歌い始めるところなんかも、なんだか素敵だな〜。おそらくこの作品に興味ある人の殆どが、ヘニングシュミートのファンの人だと思うけど、この作品を聴いて、ぜひMarie Séférianにも興味を持ってほしいな。
01. Calme
02. O Heya
03. Je
04. Respiration
05. Peau
06. Tu Coucou
07. Maison
08. Broullard
09. Da Tan!
10. Suis
11. Nuit
12. Adult
13. Nonononon
David Cordero「Honne (本 音)」(DRONARIVM) Ryan Teague『Site Specific』(King Tree) アダム・ウィルツィーや、ニルス・フラーム、ピーター・ブロデリックなど多くの才能を魅了する、Chantal Acdaのセカンドソロ作「The Sparkle In Our Flaws」が国内初リリース Sebastián Macchi、Claudio Bolzani、Fernando Silva「Luz de agua : Otras canciones」 Gareth Dickson「Orwell Court」〜幻想的な世界にいつまでも浸りたくなる、繊細なギターとうたの深い残響