Mary Lattimore「Silver Ladders」(PLANCHA/Ghostly International)

フィラデルフィア出身、現在はLA在住のハーピスト、メアリー・ラティモアの作品を取り扱うのは、彼女のファーストソロ作以来か。ファースト作時点でも、その名は知られた存在だったけど、今や、それ以上に、彼女の名を様々なアーティストの録音のクレジットやライヴのサポートでも見たりする機会がさらに多くなった。彼女のハープには癒される類の響きとはまた違った、不思議な魅力がある。2018年にリリースされた、「Hundreds of Days」は内なるインスピレーションと構築美が一体となった本当に素晴らしい作品だった。キーボード、ギター、テルミン、グランドピアノを織り込み、エフェクトによって、より一層の幻想的なサウンドを生み出してゆく。

「Hundreds of Days」までの作品ほとんどが、彼女一人による制作だったのが、『Silver Ladders』では、SlowdiveのNeil Halsteadをプロデューサー/コラボレーターに迎えていたことには、個人的に嬉しい驚きだった。既に「Hundreds of Days」の時点で、彼女のスタイルが、ある一定の完成度で作りあげられたと思ってしまうくらいの作品だったので、これからの作品のスタイルにはとても興味を持っていた。

華麗なイメージを持つハープ音楽。癒し系のヒーリングミュージックにもよく登場しますが、彼女の音楽は、内省的で、エフェクトやシンセを加えることによって生み出されるコントラストが、特に『Silver Ladders』は深く表れていて、前作の延長線上というものではなく、一旦、自分のスタイルのあるがまま、Neil Halsteadのプロデュース依頼まで、自分のインスピレーションの赴くまま、身を委ねたようにも感じる。なのでその調べは、より一層エモーショナルに伝わってくる。

Neil Halsteadについては、スロウダイヴのメンバーという、知る人はものすごくよく知っているだろうし、知らない人はおそらくシューゲイズという言葉すら何?って感じだと思うけど、こういった人から人への関係性がつながる部分に興味が出てくると、聴く人の音楽性がより深く広がってゆくし、ぜひ、スロウダイヴの「Souvlaki」とか、Mojave3とか聴いて欲しいな。その後に、本作を聴くと、あーこのギターサウンドは!となるはずなんで。

相変わらずのハープの優しく優美な音色が、徐々にエフェクトによって、波紋のように広がりながら、幽玄な世界を生み出してゆく。楽曲によっては、重厚なシンセが重ねられ、まるで深い闇や、自然のもつ厳しさみたいなものをイメージさせるものだけれど、そこに、不穏さも漂わせながらも煌びやかなハープや、ギターが折り重なってゆく。その響きは、頬を優しく撫でるようでもありながらも、とてもヒリヒリと渦巻いたかとおもうと、暗闇に差し込む、光のようにも感じられる。それししても、Mary Lattimoreのハープに、Neil Halsteadのギターがこれほど豊かにイメジネーションが共鳴するとは。聴くほどに魅力が増す作品です。

01. Pine Trees
02. Silver Ladders
03. Til a Mermaid Drags You Under
04. Sometimes He’s In My Dreams
05. Chop on the Clumbout
06. Don’t Look
07. Thirty Tulips
08. Self-Portrait of My Sister (Bonus Track)

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