Federico Durand「Pequeñas Melodías」(iikki)

ヴィジュアルアーティストとのコラボレーションで聴かせる、美しいノスタルジア

アルゼンチンに暮らす、フェデリコさんの作品は、まるで音の詩人のごとく、アンビエントミュージックを奏でる。アンビエントミュージックはともかく、フェデリコさんの音楽、その正体を掴むこと自体、容易ではないし、ほとんどの場合、そういうことは放棄し、ただ彼の調べに耳を傾けるだけでいいのかもしれません。

最新作「Pequeñas Melodías」は、間違いなくこれまでのどの作品よりも、音に背景に、泰然自若の彼しか生み出せない響に包まれている。もし過去2回の来日ツアーで彼の人柄に触れた人でしたら、この作品を聴いて、本人が目の前にいないにもかかわらず、聴く人への好意と、慈しみとが滲み出ているのを感じることができるでしょう。

「Pequenas Melodias」は、フランスのレーベル、iikki booksからのリリースとなっています。iikki booksは、ヴィジュアルアーティストと、音楽家とのコラボレーションプロジェクトがレーベルになったもので、過去に、Taylor Deupree & Marcus Fischerや、Aaron Martinの作品もリリースしています。そして、Federico Durandの作品も、バルセロナに拠点に活動する写真家、Anna CabreraとAngel AlbarránによるプロジェクトAlbarrán Cabreraとのコラボレーション作品です。

iikki booksの作品、本当にどの作品も、ため息ものの美しさで、音楽ももちろんなんですが、組み合わせの妙というか本当にレーベルオーナーMathias Van Eeclooのセンスが素晴らしい。彼は、eilean rec.も運営し、 Monolyth & Cobaltなどの名義で作品を出している音楽家でもあります。

1969年生まれでバルセロナに住んでいるAnna CabreraとAngel Albarránは、20年以上一緒に仕事していて、今年「Remembering the Future」という写真集を出しています。彼らの写真は、真実と非現実、真実と虚偽の境界、時間と記憶との関係を映し出し、その被写体として、日本の風景や日常を撮影したものも多く見受けられます。日本でもコマーシャルな幻想を見せてくれるアート作品も多くありますが、彼らの作品は、現代の風景でもあるし、まるで江戸時代〜幕末の頃の日本の風景写真を見ている印象も感じるから不思議。

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「Pequenas Melodias」のBOOKの装丁もどこか屏風絵のようだし、フェデリコさんの音楽とすごく相性が良い組み合わせだと思う。

音楽は、アコースティックギター、オルゴール、シンセサイザー、エレクトリックピアノ、ローズ・ピアノのサンプリング音源、テープ・エコーの名機ローランドRE-201、テープループを使い、シンプルでミニマルな、だけどぬくもりのある調べ。それは、私利私欲を脱したような、なんとも言えなく心地よいサウンドがゆったりと流れ、Albarrán Cabreraの写真とリンクした、美しいノスタルジアを聴くことができる。ささやかでありながら、何にも流されない彼の創造性がより一層深まっている。

試聴音源で判断せず、時間をゆったりと取って、アルバム通しで、このサウンドに身を委ねてみることをおすすめいたします。

01. Se Hizo De Noche
02. El Jardín De Rosas Antiguas
03. Las Estrellas Giran En El Pinar
04. Los Juguetes De Minka Podhájská
05. Racimos De Luz
06. Anís
07. Canción Del Reloj Cucú
08. La Tarde Ronda Por La Casa
09. El Cedro Azul

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