Bing & Ruth「Tomorrow Was the Golden Age」(RVNG Intil)〜密かに聴こうとしている人のために響いている音楽

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text : Kenji Terada (PASTEL RECORDS)

「Tomorrow Was the Golden Age」というまあ、ひねくれたタイトルですけど、実際のところこの作品、ミニマリズムの持つ反復の美しさが引き立てられた、まるでスティーヴライヒとルボミール・メルニクがコラボしているかのような…そんな何度聴いても新鮮な感覚を覚えるすばらしいものなのです。

Bing & Ruthは、NYの作曲家でありピアニスト、デービッド・ムーア(David Moore)と、2人のクラリネット奏者と、2人のベース奏者、そしてチェロ奏者に、テープディレー・オペレーターという面々で構成されたアンサンブルで、2006年に、「Bing & Ruth EP」を、翌2007年には、「Kenitle Floors EP」をリリースし、2010年にBing & Ruthとしての最初のアルバム「City Lake」をリリースしています。

正直なところ、ここまでの作品を聴くだけでも、Bing & Ruth、もしくはDavid Mooreの創造性豊かで、ユニークなアプローチに聞き惚れてしまう。実際のところ、2014年の耳でもってしても、彼らの音楽は実に刺激的だし、綿密に練り上げられたアンサンブルは、時代の風化とは無縁である。柔軟な審美眼と、デリケートで細心なアレンジへの心配りが生み出す、David Mooreによるピアノの感動的なまでの美しさは、なぜ発表当時、知ることができなかったのだろうか?と後悔の念すら感じてしまうほど。どれも甲乙つけがたい内容ばかりですが、特に「City Lake」の”City Lake/Tu Sei Uwe“はぜひ聴いていただきたい感動曲です。


さて、David Mooreは、Bing & Ruthとして「City Lake」を発表後、これまでの室内楽的アンビエント作から一転、バンジョーを片手(?)にこれまでと全くジャンルの異なるカントリー〜ストンプな音楽のプロジェクト、Pepper Johnsonや、The Piledriversという名義で作品をリリースします。どちらもよくできた作品ですが、Bing & Ruthがより神経を使って綿密なアンサンブルを生み出してゆくのに対し、あくまで本人自身がリラックスしながら楽しむものなんだろうとは思っていたのですが、もうカントリーどっぷりで、Bing & Ruthの作品は出ないのかな?なんて思ってたところに、今年ようやく「Tomorrow Was the Golden Age」が出たわけです。しかもリリース先は、ニューヨーク屈指のエクスペリメンタル・レーベルで、Julianna BarwickとIkue Moriによるアブストラクトな実験音楽や、Julia Holter、Sun ArawなどをリリースするのRVNG Intl

2枚のEP〜ファースト作では、割と、室内楽的な、綿密なプロセスがあったり、パーカッションや、ヴォーカルも加わっていたのですが、本作のメンバー構成は、ヴォーカルとパーカッションは参加していない模様。序盤、ピアノの繊細な旋律がそしてストリングスが幾重にも折り重なり、徐々にミニマルなアプローチ特有の、あらゆる楽器のもつ輪郭を溶解し、まどろみの空間を生み出してゆく。時折、旋律同士のずれによる不協が幻想的ムードをよりいっそう引き立てながらやがて、音の波が引き始めた頃、静かにDavid Mooreのピアノが響き渡る。とても優しくそして切ないメロディー、ただ、彼の場合、多くのメランコリーなピアニストが陥る、メロディーに陶酔/依存するたぐいのものではなく、少ない音数で1音1音の響きが他の空間を構成するアンビエンスにまで心配りを効かせる聴かせ方が、実に心に響き、まどろんでしまう。


最初にも書いた通り、よりスティーヴライヒのようなミニマルなアプローチ(ポリリズムな要素も垣間みれる)ではあるんですが、その手法に依存している訳では全くない。そのことは現代音楽に対し敬遠される部分の前衛的とはまた違う、緊張感を感じつつも心地よいサウンドを聴けばわかっていただけるはず。この作品の中の奏でられる音楽は、密かに聴こうとしている人のために響いているようでもある。ほぼ全曲流れが途切れることなく、自由な形式のなかでDavid Mooreの描く郷愁が流れているのです。ちなみにマスタリングは12kのテイラーデュプリーです。

個人的には、ポストクラシカルというジャンルに対しなんら抵抗もなく受け入れられるようになってきた中、今、Bing & Ruthの新作を聴くことになるというのは、なんだか必然のような気にもなってくる。この紹介文では、現代音楽の音楽家たちを引き合いに出して紹介しましたが、例えば、ピーター・ブロデリックやニルス・フラーム、マックス・リヒター、ヨハン・ヨハンソン、他には…A Winged Victory for the Sullenとか、好きな人にはぜひとも聴いていただきたいなぁ。

あと、David Mooreはピアノソロ作も2枚作っててその作品もbandcampで聴けるのでぜひチェックしてみてください。

 

 

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■ アーティスト:Bing & Ruth
■ タイトル:Tomorrow Was the Golden Age
■ レーベル:RVNG Intil
■ 品番:RVNGNL27
■ ジャンル:モダンクラシカル/アンビエント/ミニマル
■ リリース年:2014年

<収録曲>
01. Warble
02. TWTGA
03. Just like the First Time
04. Police Police Police Police Police
05. Strange Wind
06. The Towns We Love Is Our Town
07. We Are on the Side of Angels
08. Reflector
09. Postcard from Brilliant Orange

 
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2014-10-15 | Posted in 音楽レビューComments Closed 

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