津田貴司(hofli、stilllife)インタビュー 〜後篇
interview & text : Kenji Terada (PASTEL RECORDS)
前回までは、hofli最新作「LOST AND FOUND」についての質問でしたが、次は、ここ最近、活動のメインとなっている、スティルライフについてもお伺いしております。
今の津田さんの音楽が形作られた時期っていつ頃のことでしょう?また、ここ最近の作品を聴いていると、周りを取り巻くあらゆる環境の中に自身の音楽を共生させ、効果的に一体となるような表現に進んでいるような印象も持ちます。ご自身の表現活動の中で、変化してきたところがあるとすればどういうところでしょうか?
うーん。今があるのはそれまでの時間があったからなんでしょうね。今回の作品をまとめるにあたって、やはり自分が歩いてきた道程というのを考えざるをえなかったのですが。。もともと学生の頃は舞台(現代舞踊)をやっていて、そこで使う音楽を作り始めたんですね。ギターとマルチエフェクターを使ってミニマルミュージックのような事をしたり、フィールドレコーディングしたり、それをMDで編集したりして音響工作のようなことをしていました。
その後、ライブ活動が中心になり、「游音(ゆういん)」という、環境音楽的なアプローチの集団即興のイベントをやったり(max/mspというソフトでリアルタイムに音を変調し たりしていました)ラジオゾンデ(実験的奏法によるギターデュオといえるでしょうか)をやったり、最近はスティルライフのような物音のパフォーマンスをしたり。表面的にはずいぶん違うことのようにも思えますが、どれも植物の枝葉が伸びるみたいに螺旋状にいろんなアプローチをしているようです。昔のアイデアがリアルなものに感じられてまた始めたり、すこしずつ変化してたら元の場所に戻ったり、というように、螺旋を描いて進んでいる感じがします。その植物の根っこというか幹の部分というかは、自分の中では一貫しているつもりで、結局「聴く」という事に関する活動なんだと思うんです。
ぼくは特定の楽器に結びついたアイデンティティというのがどうやらないらしい、つまりギタリストであるという意識が希薄で、かといって作曲家であるという意識もない。ある意味で「リスナー」なんだと思うんです。
「聴く」とか「みみをすます」ということについて、ずっと考えているんですが、やはり聴いている意識の問題をスルーできないですよね。同じCDでもその日の体調によってテンポや印象がが違って聴こえたりもする。音に集中して、その音しか聴こえないという状態もあれば、そこで鳴っている音の全部がクリアに聴こえてすがすがしい、というような意識の状態もある。もし最近のぼくの作品や演奏が「周りを取り巻くあらゆる環境の中に自身の音楽を共生させ、効果的に一体となる」ような印象なのだとすれば、そしてそんなふうに聴いてくれる人がいるなら、自分のリスニングの旅もすこしは前に進んでいるのかなと思えてほっとします。ワークショップ「みみをすます」を継続してきてよかったと思えますね。
現在、活動の中心になってきている、スティルライフのことについて聞かせてください。まだ作品はリリースされていないのですが、どういう流れでスタートしたのですか?メンバーの笹島裕樹さんのことも含め教えてください。
『LOST AND FOUND』にもところどころ出てくるように、もともとフィールドレコーディングはずっとやっていたんです。ほんとに遡れば中学2年のときにレコーディングウォークマンを買って以来。。また物音を使って演奏することもありました、最近ではワークショップ「みみをすます」との組み合わせで、拾ってきた木の枝を使ったり。笹島裕樹氏との接点はそのあたりで、何度かイベントで共演して、一緒にフィールドレコーディングにも行くようになりました。笹島氏のソロは、いろんな種類の虫の鳴き声ばかり 入ってる作品を作ったり、コンタクトマイクを貼付けた板に砂を振りかける等の演奏をしたり。黎明期の写真表現のように、彼の姿勢はある意味でパンクだなと思いましたし、フォノグラフィーという表現形態にぼく自身さらに興味を持ちました。
ふだん昨今の風潮に対して違和感を感じることが多く、それはそれで思うところはありますが、たとえば音楽でいえば、無反省な郷愁や底の浅い耽美がもてはやされたりする感じに対して、もっとエッジの立った表現が必要だと考えていました。フィールドレコーディングに行く車の中とかで、とことん尖ったこと、でも静謐なことをやりたいとか、いろいろイメージを話しながらユニットとしての方向を探り始めたんです。当初はマイクで拾った音にエフェクトをかけたりしていましたが、どんどん削ぎ落として、今は生の音だけ、ロウソク灯りだけ、という演奏スタイルになってきました。「暗室劇」と評されたり、「繊細すぎてかえって先鋭的」と云われたり、あんまり他にない感じのスタイルができてきたと思いますが、まだまだ変化の途中という感じもしています。
郷愁や耽美という言葉の背景にあるものが反映された作品というのは、実際にそう多くはないでしょうね…ほとんどがメランコリーにより掛かり過ぎたもじゃないでしょうか?聴き手のほうも実際そういう音楽を求めていることが多いのは仕方ないことですが。
さて、スティルライフの映像をいくつか拝見させていただいたのですが、非楽器・非即興・非アンサンブルという、非常に制約が多いにもかかわらず、とても豊かな響きのある、繊細な感性を持った音を聴かせてくれます。
彼らの音を深く聴きはじめるとイマジネーションの解放が、じわじわ進み、周りの環境の境がどんどん融解されるような感覚になってくる。ともすれば、聴くことの常識を変えさせてくれる、スティルライフの奏でる響きは、今のところライヴでしか聴くことができません。
3月に、スティルライフは、ワークショップやゲストを迎えたサウンドパフォーマンスで、淡路/大阪/奈良を巡ります。
関西、四国近辺の方は、ぜひ スティルライフを始め、ゲストのパフォーマンスとともに、ワークショップをぜひ体感していただきたいです。
イベント情報
|淡路島 『陽だまりの棚田に』ワークショップ+サウンドパフォーマンス
日時:2014年3月21日(金)
集合時間:13:30
WS集合場所:「ノマド村」前 駐車場
〒656-2221 兵庫県淡路市長澤727
http://www.nomadomura.net/
出演:stilllife(スティルライフ;津田貴司+笹島裕樹)
参加費:2500円 (WS+LIVE、おやつ付き)
LIVEのみ2000円 ※お飲物は別途ご注文下さい。
WS定員:20名 LIVE定員:30名協力:猫ノ手舎/NPO法人淡路島アートセンター
お問合わせ: neconote_sha(at)yahoo.co.jp(猫ノ手舎)
※(at)を@に変えて送信して下さい|大阪 『彼方の岸辺に』サウンドパフォーマンス+ 朗読 with 白井明大
日時:2014年3月22日(土)
受付:18:30/開演:19:00
出演:stilllife (スティルライフ;津田貴司+笹島裕樹)/白井明大
会場:iTohen
〒531-0073大阪市北区本庄西2-14-18 富士ビル1F
TEL/06-6292-2811
http://www.skky.info/
参加費:2,500円 (+ドリンクオーダー)共催:iTohen+PNdB atelier
|奈良 『草土の薫りやわらぐ』ワークショップ+ライブ
with Akinori Yamasaki日時:2014年3月23日(日)
集合時間:14:00 (WSは16:30頃終了、休憩を挟み17:00よりLIVE)
出演:stilllife (スティルライフ;津田貴司+笹島裕樹)/Akinori Yamasaki
WS集合/ライブ会場:日+星+月
〒630-8112奈良市多門町35-2
TEL/0742-81-8261
http://sun-moon-star.jp/
参加費:3,000円 (WS+LIVE、お茶菓子付き) LIVE のみ2,500円
WS定員:20名 LIVE定員:30名共催:pastel records + 「日+星+月」+ sukima industries
お問い合わせ先:info(at)pastelrecords.com ※(at)を@に変えて送信して下さい
最後に、津田さんのライフワークとなっている、ワークショップについて、2013年に行ったインタビューも再掲載いたします。
まず、津田さんが「みみをすます」を始められた経緯と、「みみをすます」というのは、どういう内容のワークショップなのか?教えてください。
「みみをすます」は、かれこれ五年ほど前にはじめました。それ以前からずっとフィールドレコーディングをやってきて、身の周りの音をただ聴くこと、みみをすますことが、音楽を聴いたり演奏したりすることと同じように、時にはそれ以上に、豊かな体験であることに気づきました。その豊かな体験を、ライブと同じように人と共有できる方法はないかな、と思ったことがきっかけです。ワークショップでは、だいたい2キロくらいの距離をゆっくり歩きながら、「音を聴く」「静けさを聴く」「みみをすます」というように段階をふんでガイドします。
ワークショップを通じて参加して頂く方に、何を持ち帰ってもらいたいと思われますか?
ワークショップというと、あらかじめ用意されたものを練習するとか組み立ててみるとかの「お教室」が多いと思うんですが、「みみをすます」では、ぼく自身がその時・その場ではじめて体験する音を、実際に耳を開きながら案内していきます。大抵の場合、散歩をしているときも頭の中で考え事をしたりして、その時・その場の音になかなか意識が開いていませんが、この「みみをすます」ワークショップで、身の周りの音をただ聴くこと、みみをすますことが、とても豊かな体験であるということに気付いていただければ、と思っています。参加者のみなさんが、「みみをすます」ことの面白さに、自分の感覚を通じて味わってもらうことが目的です。
「みみをすます」ことは、意識を開かせることとおっしゃりましたが、普段の生活のリズムで周囲の環境に、みみをすますことは、なかなか時間に余裕がないと(あったとしても)意識を開かせることはないでしょうし、実は凄く贅沢なことだと思うのですが、これまでのワークショップで参加された方の反応はどんなものでしょうか?
そうですね、音だけに意識を向け続ける機会は日常の中ではほぼないですね。普段はどうしても視覚にとらわれがちですし、音にしても、その「意味」を聞いているんだと思います。ワークショップではそうした感覚の枠組みをはずしていくので、参加された方は「感覚のストレッチみたいで気持ちよかった」とおっしゃる方が多いです。視覚や意味を中心にした世界から、ちょっとだけ自由になれるのかな、と思います。いつもの散歩道が全く知らない世界のように感じたり、ちょっとしたトリップのような感覚になったという方もいました。
次は奈良について、私が言うのもなんなんですが、奈良ってご存知の通り、歴史が生み出す独特の空気が流れている場所で、どこにもない本当におおらかで、やすらかで癒されるのですが、津田さんは奈良にどんな印象をお持ちですか?
ぼくは生まれ育ちが大阪で(いわゆる「河内飛鳥」と呼ばれるあたりです)奈良には近かったので、子供の頃からよく遊びに連れて行ってもらった記憶があります。大人になってからは、演奏でも2回来ていますし、「おん祭り」を観に行ったこともあります。あらためて感じるのは、奈良市内はとても静かな街だということですね。もちろん歴史が育んで受け継がれてきたのでしょう、春日奥山の原生林も近くにあるし鹿もいるし(笑)、人間の世界だけではなくて、どこか神聖で晴れやかで澄んだ気配のようなものがあるように思います。それはおそらくサウンドスケープ(音の風景)にも現れていて、人のたてる音が密集していないので、いろんな音がよく聴こえるし、遠くの音もよく聴こえる。音の風景がハイファイなんだと思います。
投稿者プロフィール

- 生まれも育ちも奈良県葛城市。大阪は阿倍野区にあった中古レコード/CDショップにて約13年の勤務後、2006年5月にネットショップをスタート。現在は、音楽以外の仕事もこなしつつ、不定期で、大阪大正区にある、井尻珈琲焙煎所にて、出張販売を行っています。
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