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Stefano Guzzetti「Escape(music for a ballet)」〜懐かしさ、憂鬱と希望といった心模様を反映させたポストクラシカル作

今年(2016年)、日本にも来日し、ピアノによる美しい叙情を聴かせてくれた、イタリア・サルデーニャ島の作曲家/ピアニスト、Stefano Guzzetti(ステファノ・グッツェッテイ)。「Leaf」に続く今年2枚目のオリジナル作品は、ロンドンのダンスカンパニー、LCP Dance Theatreの作品「Escape」のためのスコアを、自身の作品として作り直したもの。

LCPは、人権問題への意識が高い、ダンスカンパニーで、舞台芸術を通じて、不平等と世界中の人権侵害についての問題を取り扱った作品で評価を得ています。今回の「Escape」は、難民の社会的、政治的、心理的な課題を扱った作品で、音楽を、Stefano Guzzettiが担当しています。文字情報だけですと、とても重~い作風のイメージを持ってしまうのですが、そんなイメージを覆すような、彼の繊細な描写と軽やかに躍動するリズム、そして情感溢れるメロディーに、自然と引き込まれてしまう素晴らしい内容となっています。

ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、コントラバスによるストリングス、ピアノ、フルートをメインとした楽器構成は、これまでと特に変化はないのですが、今作では、積極的に、Waves On Canvasの頃を彷彿とさせる、IDMなデジタルビートが織り込まれている楽曲が多く聴くことができます。劇的な変化というものはないのですが、ここで聴かれるサウンドは、Waves On Canvas時のような、平面的なサウンドを敷きつめたような印象だった、エレクトロニカサウンド寄りの作品とはまた違う、ある意味、Stefano Guzzettiの作曲/構成力の飛躍を実感できるものとなっています。

1曲目の”Leave”から、ブラシのようなもので刻まれるリズムに合わせ、ストリングスやフルートの調べや、電子音、軽やかなビートとともにしなやかにスタートする本作。ある一定の旋律を繰り返す作風なのですが、Stefano Guzzettiのメロディーに含まれる情感によって、人の心を底から自然に揺さぶっていく。Stefano Guzzetti名義の作品にはなかった、デジタルプログラミングが織り込まれている部分に耳を奪われがちですが、序盤ではしっとりと聴かせる”Watermusic”、人間の心臓の鼓動を表したような”Hope”、中盤以降はストリングスの重厚感がより増してゆき、最後の”Acceptance”では、困難に直面する現実をそれでも希望を持って受け入れてゆく意思が、楽曲/演奏から優しく強く伝わってきます。必ずしもコマーシャルな聴きやすさだけではない表現方法の多彩さとともに、懐かしさ、憂鬱と希望といった心模様を上手く反映させています。

CDは、『Ensemble』と同様、ハンドメイド・パッケージとなっていて、ポストカード、アルバムの収録曲や、ポストカードのアートワークのPDFがダウンロードできるクーポンなどを封入した丁寧なものとなっています。限定200枚です。

Tracklist
01. Leaving
02. Watermusic
03. Hope
04. Understars
05. Adrift
06. Undine
07. Descent
08. Acceptance

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