Last Days『Seafaring』(n5md)

自然の持つ魅力を凝縮した美しさ、そして人を寄せ付けない険しさと過酷さが投影された壮大なサウンドスケープ

以前ほど積極的にチェックすることもなくなった、n5mdレーベルですが、唯一デビュー作から聴いている、Graham Richardsonのプロジェクト、Last Days。アメリカの風景画家、ウィリアム·トロストリチャーズの作品”Quiet Seascape, 1883″をジャケットに用いた、彼の通算5枚目となる最新作『Seafaring』は、南極探検家アーネスト・シャクルトンの1914年からはじまった「帝国南極大陸横断遠征」にインスパイアされています。1914年、南極大陸の初横断を目指したものの航海の途上で氷塊に阻まれ座礁、摂氏マイナス37度の寒さと乏しい食料の中、南極圏で28人が約1年8か月に渉る漂流の末、隊員全員が生還したことで知られている話しで、このことからアーネスト・シャクルトンのリーダーシップを学ぶ記述を見かけることが多いのですが、もちろん『Seafaring』のサウンドからは、そんなリーダーシップ論が反映されている…という印象はない。

浮遊するようなオーケストラゼーション、アコースティックギター、ピアノなどのさまざまな生楽器、エレクトロニクスを用いた、Last Days独特のシネマテックなサウンドスケープは本作でも変わらずより深く心に広がるものとなっています。タイトルから、デビュー作「sea」との繋がりを連想させる本作。「sea」は、一人の男の旅の話〜逃避をテーマとしたものでしたが、『Seafaring(船乗り・船旅)』は、誰かが死ぬのが当たり前だった過酷極まりない南極探検において、自然の持つ魅力を凝縮した美しさ、そして人を寄せ付けない険しさと過酷さ、その中で生き延びてゆく仲間との繋がりを、メロンコリックな旋律が描きあげてゆく。何かが大きく変わったわけではないのだけどLast Daysの生み出す感傷的かつ叙情的なシネマティック・サウンドは、これまで以上に心揺さぶられる。

<収録曲>
01. Towards The Horizon
02. Whitecaps
03. Fading Shore
04. Tiny Flares
05. Surfacing
06. Strait Of Dover
07. Edurance
08. Weddell Sea
09. Ocean’s Arms
10. James Caird
11. Murmurations
12. Where The Sky Rests

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