【インタビュー】Monique Recknagel(SONIC PIECES)

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いよいよ今月18日から、金沢~新潟~奈良~岡山~富山~東京と、全国6か所を巡る、ベルリンのレコードレーベルSonic Piecesのショーケース(ワークショップ+ライヴ)がスタートします。今回のツアーイベント、ただ単に、レーベルアーティストの来日ライヴとはまたちょっと違った視点で興味を持ってらっしゃる方も多いかと思います。2008年頃、サポートしてくれた人達への贈り物としてCDのパッケージを作り始めたという、Monique Recknagelさん。やがてそのハンドメイドの美しく丁寧なCDジャケットと当時、ポストクラシカルという名前が産声上げ、さらにそのジャンルを一般的なものまで押し上げた、Nils Frahmをはじめ、Hauschka、F.S.Blumm、Dustin O’halloranなどベルリンのアーティストを中心としたリリースは、限定パッケージと相まって、徐々に話題になり、リリースのたびに、瞬く間に売り切れてしまうという現象をリリースのたびに起こしてきました。

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今回のツアーでは、ライヴだけではなく、Monique Recknagelさんが直接、参加者とともに、Sonic Piecesのジャケットを制作するワークショップも行います。今回は来日直前、Moniqueさんにメールでレーベルのことをいろいろお伺いすることができました。改めて、レーベルのファンや、アーティストの心をもつかむ、彼女流「レーベルの成功法則」の一旦をうかがい知ることのできる内容となっているかと思います。ぜひこのインタビューを読んで頂き、イベント会場で、彼女にいろいろ話しかけてみてください。きっとインタビュー内容同様、真摯にあなたの質問に応えてくれることでしょう。

interview & text : Kenji Terada (PASTEL RECORDS)

 

今回あなたが日本に来てくれることになり、私自身とてもうれしく思っています。日本に来るのは初めてですか?

ありがとう!ついに日本に来ることができてどんなに幸せか、うまく説明できないぐらい嬉しいわ。そう、日本に来るのは今回が初めて。だけど日本を訪れることは、Sonic Piecesを始める前から長い間夢だったの。だからとっても興奮してるし、日本の皆さんに会えるのが待ちきれないの

既にpdisのインタビューで紹介されているとは思いますが、sonic piecesを始める前はどんなお仕事をしていたのですか?またそこからレーベルに至る流れを改めて教えて頂けないでしょうか?

私が製本に関わる仕事をしていたとか、何人かの人達からは「グラフィックデザイナーだった?」とよく聞かれるの。それでいつも笑ってしまうんだけど。。。私が実際には経済学を学んでいたと言うとき、みんないつも驚くの。つまり、必ずしも経済学の学位を持っている誰かが、今の時代レコードレーベルを始めるなんて信じられないっていうことよね。多分私は十分にそれについて勉強をしたことがないし、それでキャリアを作ることを目指してはいなかったわ。

私は大学を卒業した後、ベルリンに移住することを決めたの。2002年の時ね。自分の生活費を稼ぐために会計事務所で働いていたんだけど、自由な時間のほとんどは音楽と一緒だった。コミュニティラジオで番組を持っていて、たくさんのコンサートにも言ったわ。その間私は主にラジオ番組でサポートしてくれた人達への贈り物としてCDのパッケージを作り始めたの。「あなたはそれを何千もすることはできるの?」とか「本気なの?」て時々自問自答して考えるんだけど、今このインタビューを書いている時に今まで作った枚数を数えたら、6676枚のCDパッケージを作ってた。それと通常盤のボール紙のエディションとレコードもあるわね。それは全部運の良い偶然の連続で、恐らくNils Frahmはそのメインの役割を果たしているといえるわ。

レーベル名の由来は?

それには別のラッキーな偶然の連続があるの。私のラジオ番組はドイツ語で「shall + raum」、英語では「sonic + room」という名前だったのね。それで2008年の3月にNils FrahmとLibrary Tapesのコンサートをここベルリンで初めて開催したとき、私はプロモーションのために3inchのCDRを作ったの。そこで私は特に色々考えることもなく、そのCDRにただsonic pieces 001と書いたの。

レーベル運営以外にも仕事を持っていますか?

私は主にsonic piecesで働いているわ。それと、Erikの主宰するmiasmahで、特に経営とレコードの製造でサポートしているの。だから彼(Erik)は私があまり得意じゃない他のことで私をサポートしてくれてる。私たちは良いチームでお互いをうまく補い合っていると思うわ。

でも、たとえレーベルをやっていることで生活が難しくなっても、別の仕事をすることはできないと思う。Sonic PIecesはすでにフルタイムの仕事以上になっているの。単純にもう私たち二人だけでは手に負えないことになっていたから、Erikも私も去年の8月は週に2回働いてくれるアシスタントをつけたわ。

ティーンのころはどんな音楽に夢中でしたか?

私のティーンエイジは80年代に始まって90年代を通り抜けたの。音楽はラジオでたくさん聴いていて、カセットによく曲をまとめていたわ。それらのいくつかはまだ両親の家にあるの。そこにはたくさんのその時代のポップミュージックが入ってるわよ。

私が初めて買ったCDはBjorkの「Debut」だったかな。その後はDaft Pankの「Homework」やFugeesの「The Score」のレコードもお気に入りだった。そしてMolokoの全てがとってもすきだった。特に後者は私に大きな影響を与えていたし、時々自分のレコードをまだ聴くことがあるわ。

sonic piecesのリリースに関して、あなたの周りの友人含め繋がりをとても感じさせると同時に、作品を聴いていると、アーティスト自身もあなたのレーベルをリスペクトしているのが伝わってくる素晴らしい内容のものばかりなのですが、リリースの基準というものに対しては、どのような考えをお持ちでしょうか?

始めに、とても嬉しいことを言ってくれてありがとう!リリースのための一番大事な基準はもちろん音楽ね。それが何らかの形で自分とつながって、私の中の何かを動かさなくちゃいけないの。でも同時に、私が働いている人達との良い関係を持っていることも重要ね。それは実際に、正直にいえば私にとってますます重要になってきてる。それは私が一つのリリースに対してとてもたくさんの仕事と時間を使っているから、アーティストが私のことを理解して、私の仕事を評価してくれているって感じていたいからなの。

理想をいえば私はリリースの契約をする前に、そのアーティストに会いたいわ。それは必ずしもできることじゃないけど、時にはそれがリスクを回避する良いことだといえる。たとえばMoon Ate the Darkはデモを私に送ってきて、私はそのアルバムがとても好きだったからリリースに合意したの。その後彼らはNils Frahmとアルバムのマスタリングをするためにベルリンに来て、今では彼らは私が出会ってきた最も素敵な人といえるわね。

ハンドメイドのパッケージなんですが、布のカラーはアーティストが決めているのですか?

これは普段アーティストと一緒に決めている。会って、色見本を見て、アルバムに合うと思う色を決めるのが一番良いケースね。会えない場合は、好みを話し合って、私がいくつかのサンプルを選んで最終的な色をアーティストに送るの。時々私たちはTorstenにアドバイスを求めるわ。彼はベルリンを拠点に置くデジタルクラフトのスタジオFELDで働いていて、Nils Frahmの「Wintermusik」以来、全てのSonic Piecesのレイアウトをしているわ。

以前、sonic piecesのマイスペースで、カラフルなパッケージを拝見したことがあったのですが、今後も単色でのリリースとなるのでしょうか?

私はCDのパッケージを異なる材料で試してきたの、例えばラッピングペーパーとか和紙とか。和紙は装丁のために使用するにはとてもよいものね。でSonic Piecesのパッケージを替えることは考えていないの。私はこれがとても強いシリーズだし、収集する価値のあるものだと感じてるわ。私たちは新しい布の色を見つけられる限り、同じパッケージングのコンセプトを続けていくつもりよ。新しいプロジェクトを追加することはあるかもしれないけど。

レーベルのプロモーションはどのようにしているのですか?

私たちはサンプルを雑誌やラジオに送るような一般的な方法でプロモーションを行っているわ。過去何年かにわたって私たちは良いコネクションを築いているの。そのうちのいくつかは真のフォロワーで、私たちがするほとんど全てを好きでいてくれている。新しいリリースや私たちのネットワークの中で新しいコネクションができて、それはゆっくりと成長しているわ。私たちはソーシャルネットワークを使って、オーディエンスの近くにいようとしているの。たとえ普通の連絡としてもそれはすごく良いことだし、フィードバッグを私たちにくれるの。

リスペクトしているレーベルはありますか?

私は今日インディペンディエントレーベルを運営しているほとんど全ての人達を尊敬しているわ。それは大変な仕事だし、いつだって少ないお金だから情熱がないとできないわよね。

レーベル運営でストレスに感じていることはありますか?

レーベル運営は本当にたくさんの仕事があるの。もちろんスーパーストレスのある時もあれば、少しゆっくりできる時もある。アップダウンもあって、でも全ての仕事にいえるわね。でも全体として見れば、私は自分のために働けて、私が楽しめることをしているんだからとっても幸せだと思う。

逆に、幸せを感じたことをいくつか教えて頂けますか?

それはいつだってほとんどシンプルなことが幸せにしてくれるの。素晴らしいデモを聴いたり、それに興奮したり、アーティストがSonic Piecesのレコードを初めて見た時の目の輝きや、ファンが音楽やレーベル、私のしている仕事にどれくらい感謝しているかを伝えてくれる嬉しいメッセージをもらった時だったり。時々私たちは思わず笑顔になってしまうようなメッセージをもらうことがあるの。

今度リリースされるのが一緒に日本に来てくれる、Otto A Totlandの作品なんですが、Erik K
Skodvinも含め、Deaf Centerの2人については、アルバム、7インチときっちりサポートされている印象を持ちます。彼らはどんな人たちで、音楽面についても、どんなところに魅力を感じますか?

私は2006年にTypeから出た彼らのアルバム『Pale Ravine』からDeaf Centerの大ファンだったの。その時私は彼らのことを個人的に知らなかったの。2009年にSonic Piecesを初めてすぐの2009年にErikがベルリンに引っ越してきて、私たちはすぐにお互いのつながりを感じたわ。そしてOttoがベルリンにいるErikを尋ねた時、私が彼と会うまでそう長くかからなかった。

彼らと一緒にいると本当にいつも楽しいわ。彼らは本当に愛すべき、温かい人達、だけど本当に違う人達なの。Ottoは穏やかで落ち着いているんだけど、Erikはむしろ好奇心旺盛で冒険家。私はあなたが彼らの音楽の中でそれを感じることができると思う。2人がDeaf Centerとして一緒に演奏するとき、異なる二つのキャラクターが完璧にお互いを補完してるの。

以前に比べ、現在は、レーベルを始めることが容易な環境にある半面、これまでレーベル~流通~小売~リスナーというサイクルから、それぞれが恩恵を得る流れが崩れてきているように思います。またsonic piecesを始め、ハンドメイドのパッケージにこだわりを持ったレーベルもたくさん見かけられるようになりました。Moniqueさんは現状をどのようにとらえられていますか?

今は簡単にレーベルを始められるっていうことには同意するわ。そしてアーティストは10年前や20年前よりも簡単に音楽をシェアできるようになった。インターネットやソーシャルネットワークはそのために大いに役立つわね。でも同時に私は音楽業界の主な問題点の一つとして見ているの。市場全体は完全に飽和していて、どんな音楽オタクもコレクターも、誰一人全ての新譜をまめにチェックすることはできなくなってしまった。そしてそれは人々の注目を浴びることが、はるかに困難になってしまったということだと思う。

レコードをより特別な形で作ることは、それらのリリースの集まりの中で目立たせることに役立っているわ。まだフィジカルのレコードを買っている人々のほとんどがコレクターであり、その人達のほとんどが本当に特別な手作りや限定アイテムに感謝していることに気づいたの。

今後レーベルを始めようと考えている人にアドヴァイスがあればお願いしたいのですが。

レーベルを始めるにあたって最も大切なことの一つは非常に明確で強いコンセプトを持っていること。はっきりとしたブランドを作ることが極めて大事だとさえ言える。そうでなければリリースするものを十分に吟味して、少なめのリリースをし、良い品質であることに気を配り、たくさんの仕事と少ない収入という心構えをしておく、というのを薦めるわね。

今後の予定を教えてください。

私は今、今年よりたくさんのレコードを控えていて幸せです。次のリリースはErikのニューアルバム『Frame』。全部うまくいけば、日本に行くときにいくつかコピーを持っていけると思うわ。あとMoon Ate the Darkも秋にリリースするニューアルバムを完成させたところなの。さらに私は違うパッケージの新しいシリーズもスタートさせるわ。最初のリリースはDeaf Centerのミニアルバムで、リハーサルの時に録った二つのライブ作品になってるの。私たちは日本のツアーにCDのコピーを持っていくべきね。オフィシャルには夏の暮れか初秋にリリースなんだけど。でもあなたが私たちのライブに来るならその時にゲットできるかも!

おお!なんか最後のところでDeaf Centerの秋頃リリース予定のミニアルバムがこのツアーでゲットできるかも?なんて…。おそらくテキトーなこと言わない人だと思うので、きっと用意してきてくれるでしょうね。ファンの方はなんとしてでも手に入れたいでしょう!さてツアーの日程は、下記画像クリックしチェックしてみてください!!!ちなみに奈良はこちらです。ご予約お待ちいたしております!
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2014年04月07日 | Posted in インタビュー | | Comments Closed 

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