「世界の快適音楽セレクション」出演!Masayoshi Fujitaインタビュー2012

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1/11(土)にNHK-FMで放送された、
ゴンチチの「世界の快適音楽セレクション」に、
私が大好きなアーティストの一人、
Masayoshi Fujitaが出演しました。

昨年末、ご本人から教えて頂いたのですが、
自分のお店で、三上さんが藤田さんの作品を購入された際、
もしや気に入ってくれるかも!
なんてひそかに思っていたのですが、
まさかこのような形で、
番組に出演という流れになるとは…。
しかもしっかりコラボもしているし(笑)。

ではでは、藤田さんのことを知らない方に少し説明を。
彼は、もともと、というか現在もなんですが、el fog ( エルフォグ )
というソロプロジェクトで活動をしています(現在は本人名義ですが)。

2006年よりベルリンに拠点を移し、
2009年1月には、ベルリン最大の
エレクトロニックミュージックフェスティバル、
Club Transmedialeに出演し
Pan Sonic, Tilman Ehrhorn, Yasunao Tone, Shibuya Keiichirouらと共演しています。

エレクトロニカ、ダブ、ジャズ、
ヒップホップ、クラシックなどから
インスピレーションを受けた、el fog の音楽。

クリック、ノイズを複雑に散りばめたリズム・プロダクションに、
ヴィブラフォンによるメロウなフレーズにより描かれた
美しい音響空間は、これまでのエレクトロジャズの範疇とはまた違った、
深遠な世界を聴かせてくれます。

2007年英国moteerより1stアルバム『reverberate slowly』を発表
(現在はflauより再発されています)。
2009年に、東京のレーベルflauより『Rebuilding Vibes』をリリース。
そして、2012年11月に、本人名義による、
初のヴィブラフォン・ソロ作品『Stories』(flau)を
リリースしています。

また、Jan Jelinekとのコラボレーションや、
ベルリン/ロンドン在住のメンバーからなる、
Pan Am Scanでの活動も。

今回は、pastel recordsで、2012年に行った、
インタビューを再掲載。

アルバム『Stories』をリリースした直後に行ったものです。
ぜひ読んでみてください。

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Q.1 ソロ名義での「stories」聴かせていただきました。表現が乏しい言い方になりますけど、本当に素晴らしい作品でした。僕の知っているヴィヴラフォンの作品でここまで情景の見える作品はこの作品だけです。もちろんel fogとは別物の作品なんでしょうが、これまでel fogでの試みとは全く切り離して「stories」は作られたんでしょうか?

 ありがとうございます。特に切り離してという意識はなく、基本的には、曲が出来ていく過程のなかで、el fogの曲調よりもアコースティックでやりたいと思って発展していった曲が多いです。そう言った意味では、原点は同じですね。中には「Snow Storm」の様に、元々el fogのライブで演奏していた曲をアレンジし直してアコースティックの曲にしたものや、「Story of Waterfall I. & II.」の様にel fogとして作りつつも、もっと先の完成型というか純粋な形が見えていたものもあります。逆に、DeersやRiverなどの様に、曲のアイデアはあってもel fogには合わないなと思っていたものもあります。

 Q.2 話が前後するんですが、el fog名義での最初の作品「Reverberate Slowly」がリイシューされました。これは、5年ほど前の作品で、ヴィヴラフォンを中心とした作品ではなくエレクトロニカ/ダブな作品なんですが、この頃はどんな作品を作りたいというイメージがあったのでしょう?

当時はエレクトロニカ~ダブにのめり込んでいたので、自分でもそういう音楽に強く影響されて作っていました。それ以前からヒップホップやブレイクビーツも好きだったので、その辺をミックスした音を作ろうとしていましたね。あとは、雰囲気のある曲を作りたいというのが常に自分の中にありました。そうして作って行く中で湧いてきたイメージと深く結びついて、すごく映像的な音を求めていましたね。それは今も変わらないかもしれません。

 Q.3 以前、ネットで昔のインタビューを拝見したんですが、ヴィヴラフォンは20代で始められたんですね。

そうです、もともとは子供の頃からドラムをやっていました。でも才能ないのに気付いて辞めました(笑)。あと自分の音楽を作りたいというのもあったので。ドラムでは曲作りはむずかしいですから。ヴィブラフォンは、始めた当時2年ほどレッスンを受けましたが、楽譜や音楽理論は苦手だったのであまり身に付かず、その後はほぼ独学で勉強しています。手探りなのですごく時間がかかりますが。

 Q.4 その頃は、誰か特定のミュージシャンに影響を受けてた、というのはあったのですか?

ヴィブラフォンに関しては、特に誰に影響を受けたというのはありませんね。父が聞いていたジャズのレコードからヴィブラフォンの音は知っていて、とても良い音だと思っていましたが、演奏者の名前はあまり知りませんでした。音楽的に影響を受けていたのは、特定のミュージシャンというよりもその頃聞いていた音楽全般からですかね。当時音響と呼ばれていたような音楽やエレクトロニカ、ダブ、ヒップホップとか。あまり特定のミュージシャンにのめり込むという事はその頃なく、いろんな人の音楽をあさっていました。

 Q.5 さて「stories」の話ですが、ソロ名義で作品を出すことは以前から考えてたことなんでしょうか?

そうですね。アコースティックのソロを出したいというのはわりと前から思っていました。一番古いもので、4、5年くらい前からやっている曲もありますし。今ある曲も、大部分はわりと前からあったんですが、演奏の技術が追いついていなかったのもあり、作品として完成させるまでだいぶ時間がかかりました。今でも演奏技術や表現力みたいな部分は、まだまだ納得いっていないですが。

 Q.6 資料によると、森や山、川、動物といった自然がテーマとなっているとのことですが、今作のコンセプトについて、藤田さんの言葉でご説明頂けますか?

おとぎ話に出てくるような、森の中にある山や川、湖、そこに住む動物などがモチーフになっています。たまに人間や妖精も出てきます。すべての話は一つの森の中で起きていて、たまにつながっていたりする曲もあります。アイデアが先にあって作ったのではなく、一つのフレーズやコードから曲になって行く過程で情景や物語の様なものが見えてきて、今度はそれをたよりにその世界観を広げていくという事の繰り返しで曲が出来ていきました。物語と言っても詳しい話しが思い浮かぶ訳ではなく、本の挿絵のような断片的な情景だったりする事が多いです。

 Q.7 演奏の内容に関してですが、こんなにもヴィヴラフォンって表情豊かな楽器なんだな~と改めて感動したのですが、例えば、”cloud”での深遠なアンビエント的サウンドは、どうやって生みだしてるんですか?またメロディアスなところも印象に残りました。

“Cloud”では、弦楽器用の弓を二本持って演奏しています。鍵盤の端を弓で弾いてグラスハープの様な持続音を出しています。現代音楽などではわりと使われる手法です。他の曲でも、楽器にものを置いたりして演奏する、いわゆる「プリペアド」という手法を使ったりしています。ビーズの鎖や手ぬぐいやアルミフォイルを鍵盤の上に置いたり。弓を使う方法は、以前から、ヴィブラフォンは弦楽器や自分の息を使って音を出す楽器などに比べて、演奏者の動きがダイレクトに音に反映される割合が少ない楽器だと感じていました。フルートやバイオリン等に比べて、演奏者が音をコントロールできる度合いが小さいと。そこでこの弓で弾く方法を使いはじめました。マレットで演奏するよりも、もっと身体的というか自分が音の最初から最後まで関与できるような奏法だと思います。その分、とても難しいですが。

 メロディに関しては、他の曲もだいたいそうなんですが、適当に弾いているときにふと聞こえてきたフレーズを取り出して、それを何度も演奏しているうちにその先の音が何となく聞こえてくる感じで出来ていきました。なので、自分の中から出てきたというよりは、聞こえてくる音を拾っていったという感覚です。

 Q.8 あとこの作品で、おそらく聴く人の多くが”Story of Forest”や”river”での弦楽器を取り入れたアプローチにうっとりされると思います。このアレンジの狙いは?

今後、もっと色々な楽器を使った曲を作りたいと思っているので、その練習というか、第一歩です。これは本当に手探りだったのでだいぶ時間もかかりましたが、非常に楽しかったです。狙いというか、”River”についてはもっと楽しく勢いのある感じを強調したかったというのがあり、”Story of Forest”は、もっと雰囲気を盛り上げてくれるようなものが欲しいなと思っていました。あと、わりとライブ重視で曲を作ってしまう傾向があって、音源として聞くと自分の期待しているものより少し弱いなと感じる事がたまにあるので、その辺もカバーするという意味合いもありますかね。”River”なんかは、鍵盤にアルミフォイルをのせて、マレットの柄の部分も使ってわりと勢いよく演奏するんですが、音だけ聞くと何をやってるのかよくわからない部分も多少あると思うので。

 Q.9 アートワークも素敵ですね。今回のアートワークは藤田さんによるものなんですか?

いえ、今回のジャケットのイラストは、フレックというアーティストの作品を使わせてもらいました。以前ネットで彼の作品を見かけてとてもいいなと思っていて、今回声をかけました。表紙の絵は前からある彼の作品なんですが、今回のアルバムのコンセプトと雰囲気にぴったりだと思ったので使わせてもらいました。全体的なデザインも、古い本のような雰囲気が出るように仕上げてもらって、すごく気に入っています。

 Q.10 マスタリングはニルス・フラームなんですが、マスタリングにあたっては相当ご苦労があったと、風の噂で聞いてます。作品の仕上がりに対してはどのような希望を持っていましたか?

奈良には妙な風が吹いているんですね(笑)。苦労というか、僕はいつもそうなんですけど、人に何かお願いする時すごく口を出したくなってしまうんです。特に音の事に関してはやはり譲れない部分というのはあるもので。今回も度々注文が多くて向こうもちょっと大変だったみたいです。ニルスとは以前から友達だったからというのもあったと思いますが。彼もとても良い人なので、根気よくつき合ってくれましたし、最後は僕も満足したという事で喜んでくれていました。
仕上がりに関しては、暖かみがありつつクリアで深い音と言ったら曖昧ですが、そう言うイメージでした。録音の頃からその辺りは意識していたので、出来た音は気に入っています。

 Q.11 最後にこの作品を藤田さん自身が聴くとしたら、どのようなシチュエーションで聴きたいと思いますか? 

やはり暖かい部屋の中で、少し灯りを落としてゆったりと座って聴きたいですね。自然の景色なんかを見ながら聴くのも良いと思います。でもやっぱりライブで聴いてもらえたら一番ですかね。

 

 

2014年01月08日 | Posted in インタビュー | タグ: , Comments Closed 

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