Dylan Golden Aycock「Church of Level Track」〜Takoma Schoolのルーツをレゾナンスさせた、イマジネーション豊かな調べ


text : Kenji Terada (PASTEL RECORDS)

ローレン・コナーのアストラル・ブルースとタコマスタイルのフィンガーピッキングが結びついたスタイルで、オーストラリアのPreservationレーベルからデビューアルバムをリリースしていたTalk West。そのTalk West名義で作品をリリースしている、オクラホマ州のタルサ在住のDylan Aycockの、Dylan Golden Aycock名義の作品「Church of Level Track」を今回はご紹介。

Dylan Aycockは、他にも、Brad Rose (Charlatan、The North Sea)とのユニットAngle FoodやMohawk Parkでの作品もリリースしているのですが(どれも実験的なドローン作が多い)、ここ作品のリリースを見ると、Talk Westと、Dylan Golden Aycockがメインとなっている模様。本作「Church of Level Track」は、Dylan Golden Aycockとして、2016年リリースされた、通算4作目となる作品です。

リリース先は、オクラホマ州は、タルサのレーベル、Scissor Tail Editionsで、グラスゴーのギタリストでシンガー・ソングライター、Gareth Dicksonによる、ニック・ドレイクのトリビュート・プロジェクト「ニックド・ドレイク」のアルバム『Wraiths』をリリースしていたり、ボブ・ディランの有名な曲「ミスタータンブリンマン」のモデルになった、ブルース・ラングホーンのサントラ作「The Hired Hand 邦題:さすらいのカウボーイ」のアナログ再発や、トリビュート作(Lee RanaldoやLoren Connors、Steve Gunnなどかなり濃い面々が参加しています)『The Hired Hands: A Tribute to Bruce Langhorne』、Scott Tumaの2001年、2003年の名作ファーストとセカンドをカップリングした作品「Hard Again / The River 1 2 3 4」を始め、ブルースやオールドタイムをベースとした、アーシーア魅力と、ドローンでメランコリックな、アメリカーナな作品を数多くリリースしていて、ジャケットのアートワークや、レコードやカセットがメイン(CDも出ていますが)の、丁寧なリリースが印象的な注目のレーベルで、ぜひ他の音楽家の作品もチェックしていただきたいです。

話をDylan Golden Aycockに戻して、もともとカセットや、アナログオンリーのリリースが多いのですが、韓国ソウルにある人気の本屋さんYour Mindのコンピ「Mixtape For Dawn」(他にはJanis Crunch & Haruka Nakamuraや、Tobias Wilden、Aspidistraflyなど)でも、彼の2013年作「The Blind Fold」からの”Horse Thief Spring”が選曲されていて、ご存知の方もいるのではないでしょうか。

Dylan Aycockは、John Fahey、Robbie Basho、Glenn Jonesらギターピッカーらの系譜に位置する、実力ある若手ギタリストなのですが、それと同時に、ドラムや、ベース、ヴァイオリン、シンセなど、1曲ペダルスティールのゲストを除く、すべての楽器を演奏している、優れたマルチ奏者でもあります。彼の雄弁で複雑なタイム感で操るフィンガーピッキングで飛び交うアコーステックギターや、スティールギター、そして12弦ギターの響きは、伝統的なスタイルをベースに、徐々に音響的で、サイケデリックな空間を生み出してゆく。どこか荒涼とした風景を思い浮かべたり、ただ耳をすませているだけで不思議な懐かしさに襲われたり…ギターの録音が本当に美しくって、細やかで繊細なプロダクションが広がってゆく、イマジネーション豊かな調べは、何度聴いても聴き飽きることがない。ジムオルークの「Bad Timing」や、James Blackshawのギターが好きな人だったら、ぜひDylan Aycockの作品にも触れていただきたいです。

 

 


2017-01-02 | Posted in 音楽レビューComments Closed 

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