CECILIA ZABALA「EL COLOR DEL SILENCIO」〜独創性溢れる”静寂の色”を映し出すギターとうたの調べ

text : Kenji Terada (PASTEL RECORDS)

いつ出会うかわからない音楽の鉱脈。伝統を大切にしながらも、そこから様々なジャンルの素養が組み合わさり、土地の風土を感じさせながらも洗練された感性で独自のサウンドで描きあげてゆくアルゼンチンの音楽。特にここ数年の間に出会えた音楽家の多くは、日本人の琴線にも触れる、芳醇で美しいオーガニックな質感と心地よい哀愁を併せ持っていて、どうにもこうにも心惹かれてしまう人ばかり。そして、ここに紹介する、CECILIA ZABALAもこれまで日本で紹介されてきた、アルゼンチン音楽家の中でも最大級に注目してほしいひとり。最近リリースされた最新作「EL COLOR DEL SILENCIO」も相変わらず素敵な作品ですし、日本でも人気のあるQuique Sinesi(キケ・シネシ)に師事していたし、なんでこれまで彼女の作品が国内盤化されていなかったのかが不思議なくらいなので、新作をきっかけに、アルゼンチン音楽に馴染みない方含め、多くの人の耳に届くことを願っております。

7弦仕様のクラシックギターを操り、敏感な感情をギターに伝え奏でる確かなテクニックと、可憐な佇まいの歌心を併せ持った、ブエノスアイレス出身のギタリスト、シンガー/作曲家、CECILIA ZABALAの作品としてのデビューは、2004年に、クラリネットのエミリアーノ・アルヴァレスとのデュオ、Alvarezabala dúoとして、「HALO DE LUZ」をリリースするところから始まります。

Alvarezabala dúoは、このリリース以前の1997年ブエノスアイレスで結成されているので、この作品でのCECILIA ZABALAの演奏や彼女のオリジナルを聴く限り、古典的なフォルクローレの下地がありながらも、ジャズやブラジル音楽、そしてエクスペリメンタルな要素が難解にならず、表現に豊かな表情を与えているところに、ギター奏者だけでなく作曲家としてもすでに完成された域に達しているのがわかります。その後、2005年に、女性フルート奏者であるラニナ・ピエトラントニオとのデュオ、Las Morochasとして、アストル・ピアソラの楽曲をカヴァーする作品「MILONGA SIN PALABRAS」をリリース。

これらデュオ作を2枚リリースしたのち、2007年に自身のソロ作「Aguaribay」をリリースします。この作品、タイトルもジャケットも素敵なんですが、何よりそれらイメージを裏切らない、CECILIA ZABALAの弾き語り作品で、ソロ以前の表現の幅を、グッと凝縮し、優雅さと気品溢れる作品となっているのです。

彼女のオリジナル曲とともに、アルゼンチンが生んだ世界的フォルクローレギター奏者、アタウアルパ・ユパンキや、グスタボ・”クチ”・レギサモンの古典とも言えるカヴァーから、アカセカ・トリオのJuan Quinteroまで、それらが、何の垣根も感じさせない彼女ならではの、とても清涼感ある洗練された響きがたまらなく心地よい。エグベルト・ジスモンチのレーベルからリリースしている、シルヴィア・イリオンドや、ファン・ファルー、キケ・シネシがゲストで参加していますが、そんなゲストの存在感以上に、この作品でのCECILIA ZABALAの魅力に心奪われてしまいます。

続く、2008年にリリースされた、「Pendiente」では、「Aguaribay」の流れを引き継ぎつつも、オリジナル曲がさらに増え、楽曲ごとに、チェロやサックス、コントラバス、ファゴット奏者などのゲストミュージシャンが参加し、より彼女のイメージする音楽的な創造性が広がったものとなっています。ちょっとさらっと紹介だけになっていますが、これ個人的にはかなり好きな作品。

2011年には、ソプラノ、クラリネット、ハーモニカ、など多彩なマルチ奏者ぶりを発揮する、Eliana Liuni(エリーナ・リウニ)に、フォルクローレ・ジャズを代表するパーカッション奏者、Mario Gusso(マリオグッソ)、ベースのMariano Martos(マリアーノ・マルトス)とともに、バンドサウンドで聴かせる作品「Presente infinito」をリリース。これまでの弾き語りスタイルから一気にバンドによる躍動感あふれる演奏となっていているのもこれまでのソロ作と違うところなんですが、自由に躍動する閃きや、繊細で綿密な感性を織り込んだ、彼女の視野の広さが伺えるこれまた素晴らしい作品。Rufus Wainwrightのカヴァーも。

その後、2013年に、チリのフォルクローレの音楽家、ビオレータ・パラの音楽を、独自の解釈でしなやかで美しいギター独奏を披露した作品「Violeta」や、2015年には、かねてから親交のあった、ブラジルのギタリスト/作曲家のバーデンパウエルの息子さんで、ピアニストのフィリップ・バーデン・パウエルとの共演盤「Fronteras」を発表するなど、コンスタントに作品を重ねてゆき、2016年に最新作「El color del silencio」に至ります。

全て彼女のオリジナルで占められ、7弦ギターと歌がもちろん主役なんですが、弾き語りから、独奏、スキャットによる独創性溢れる”静寂の色”を映し出しています。彼女のギターにしても、歌にしても、もちろん上手いのですが、技術が印象に残るというよりは、本当に周りの雰囲気を変えるナイーヴな佇まいというものにうっとりさせられます。既にフォルクローレやブラジル音楽、クラシックなどのルーツを超えたCECILIA ZABALAの研ぎ澄まされた感性が、円熟の演奏力と尽きぬ創造性と美しく融け合った、近年のモダンフォルクローレの中でも屈指の、彼女の代表作にふさわしい作品となっています。

CECILIA ZABALA「EL COLOR DEL SILENCIO」

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Track List
01. La Otra Mitad
02. Milagro
03. El Color del Silencio
04. Las Lleva el Viento
05. Resistencia
06. No Le Temas
07. Hermano
08. Princesa
09. Detrás del Horizonte
10. Coming Home
11. Miniatura
12. Azul de Madrugada
13. Perezoso
14. Gris y Amarillo

2016-10-16 | Posted in 音楽レビューComments Closed 

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