Various Artists「Piano Cloud Series」〜1631 Recordingsでないと実現不可な、豪華アーティスト参加のソロ・ピアノシリーズ

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text & select : Kenji Terada (PASTEL RECORDS)

Library TapesとKning DiskのMatthias Nilsonが新たに立ち上げたポスト・クラシカル専門の新レーベル1631 Recordings。日本では流通の悪さから、レコード店経由ではなかなかピックアップしにくいんですが、Iskra String Quartet「Iskra」リリース以降、配信を中心にリリースしている感じで(Kning Diskもだけど)、より一層知る人ぞ知る的なレーベルになってくる気配も…。

ただ、知らないうちに、シングルを含め結構な数のリリース配信をしていて、例えば、日本にも来日したこともある、オーストラリアのピアニスト、Sophie Hutchings(近くPreservationから発表される新作も素晴らしいですよ)や、Moon Ate the Darkとして、ベルリンのsonic piecesよりリリースしている、Anna Rose CarterとPleqのコラボ、最近印象に残る作品をリリースしているアイルランドのPaddy Mulcahy、そして今後要チェックな雰囲気漂う、イタリア出身の作曲家Marco Caricolaなど、なかなかに充実しております。

そんな中、「Piano Cloud Series」と題された、作品集がリリースされたのですが、参加アーティストがまた素晴らしくって、しかもピアノソロが中心の、頼むからCDでリリースして流通してくれないかと願わずにはいられないくらい、素敵な作品なのです。かつて、Kning Diskレーベルには、ソロ・ピアノシリーズというものがあって、そこからPeter Broderick、Nils Frahmが突出した存在となっていったように、「Piano Cloud Series」に参加している音楽家たちの中にも、きっと将来、このジャンルのキーマンとなる人材も含まれているはずです。

参加アーティストは、Nils Frahm、Library Tapes、Peter Broderickと、king diskの時代に飛躍したポストクラシカルのジャンルではもうお馴染みの音楽家に、イタリアはマントヴァのピアニスト/作曲家、Fabrizio Paterlini、前述のAnna Rose CarterやPaddy Mulcahy、この公園喫茶でも紹介したOskar Schuster、FatCat Records傘下の130701レーベルから最近リリースしたばかりのDmitry Evgrafov、Pill-Ohとしての活動でも知られるギリシャ出身・独ベルリン在住の音楽家で、KITCHEN. LABELからリリースしているHior Chronik、Hidden Shoal, Time Released Sound, Analogpath, Highpoint Lowlife, Dead Pilotなど数多くのレーベルからリリースし、1631 Recordingsにも名を連ねる、Stray Ghost、そしてSchole主宰のAkira Kosemura、ベルリン在住のDaigo Hanada2人の日本人の名前も…。他にも、端折ってしまうのがもったいないのですが、Joep BevingMatt Stewart-EvansLucy ClaireHeinaliAlice BaldwinEndless MelancholyGabriela ParraBenjamin Gustafssonと、知らないピアニストであっても必ずチェックしておいた方がいい人たちばかり!

すでにモダン・クラシカル・シーンも成熟したジャンルになっていて、色彩や雰囲気的な価値だけに陶酔した演奏が量産されてきている昨今、ここで聴くことができる音楽家たちの演奏は、多少の差はあれども、ポリフォニックな演奏だったり、豊かな詩情あふれるものだったり、理論と雰囲気をセンスよく取り込みピアノで表現できている、聴き応えあるものばかりです。

なんとかレコード/CD化してくれないものでしょうかね…。

◾︎Tracklist
1. Nils Frahm – Nils Has a New Piano
2. Library Tapes – Running by the roads, running by the fields (solo piano)
3. Peter Broderick – Eyes Closed And Traveling
4. Fabrizio Paterlini – Everyone Wants To Be Found
5. Joep Beving – A Hunger for the new
6. Oskar Schuster – Singur
7. Dmitry Evgrafov – Unasked Questions
8. Anna Rose Carter – Unstitch
9. Stray Ghost – Two steps too often aside (Early Variation I)
10. Matt Stewart-Evans – Opus #24
11. Lucy Claire – Kaiwata Tsuki – The Barren Moon (Solo Piano)
12. Hior Chronik – In the morning I’ll be with you
13. Heinali – Soft Like Snow
14. Alice Baldwin – Vater
15. Endless Melancholy – November
16. Gabriela Parra – Olopte’s lullaby
17. Daigo Hanada – Again
18. Paddy Mulcahy – Waltz Sketch
19. Benjamin Gustafsson – Close To Her
20. Akira Kosemura – Farewell

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