Johanna Warren「nūmūn」〜精神的ヒーリングに満ちた美しき歌唱

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text : Kenji Terada (PASTEL RECORDS)

 
紹介するのが遅くなった感もありますが、ポートランドの女性アーティスト、Johanna Warrenが昨年2015年にリリースした「nūmūn」は、個人的にではありますが、洋邦問わずここ数年リリースされた、シンガーソングライターの作品の中で、間違いなくベスト3に入るくらいの作品だと思う。

2013年に自主リリースされた、「Fates」でもフォークスタイルのシンプルなものながらも、才能をまだ持て余しているような、所々で彼女のすごさの片鱗を感じさせるもので、この作品もぜひ聴いてもらいたいのですが、やっぱり「nūmūn」が良すぎて霞んでしまう。個人的に裏方目線をしてしまうので「Fates」「nūmūn」ともにクレジットされているBella Blaskoの名前が気になった。

Bella Blaskoの名前は広く知られているわけではないのですが、音楽家としてではなく、エンジニアや、プロデューサーとして、The National や、Natalie Merchant(10,000 Maniacsって知ってるでしょうか?)ティム・バーンの作品など、数多くの作品に関わってきている。 それら音楽の振れ幅は、どこか一筋縄ではいかないものの、きちんと冷静に様々なアイデアを受け止め、判断できるセンスと経験が、Johanna Warrenの才能を受け止め、この作品に、生かされているのではないのかな、と勝手ながら思ってしまった。

もちろんJohanna Warrenの、ジョニ・ミッチェルや時折ケイトブッシュを彷彿とさせる、歌心を大切にする才能豊かな歌唱力はもちろんのこと、ギター、フルートを操り、空間アレンジのアイデア、歌唱力に依存するようなものとは根本的に違う、豊かな表現が根本にあるのですが、ストリングスなどのチェンバースタイルで簡単に生み出してしまうものとは違い、フォークスタイルの中で自分たちができる最小限の方法で、Johanna Warrenの持つ神秘性を浮かび上がらせているところが本当に素晴らしいし、2人の信頼関係がより成熟した成果だと思う。それらが奇をてらったものでなく、聴くものを圧倒させるわけでなく、ただただ彼女の放つ表現が何の抵抗もなく、すっと入り心癒してくれるのです。

公開されているミュージックビデオや、ヴィジュアルイメージなどは、ある種の宗教観が反映されたものとなっているようですが、まずは、作品背景は別として、純粋に、彼女の優しく幻想的な音世界に触れて頂きたいです。

2016年02月11日 | Posted in 音楽レビュー | タグ: , , , Comments Closed 

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