公園喫茶インタビュー:Chantal Acda〜わたしはこのアルバムで、自分自身を許したかったの

(CA) Press Photo 1 ク Terry Magson

interview & text : Kenji Terada (PASTEL RECORDS)

いつだって、誰だって、人との関係の中で、悩み、行き詰まってゆくことがある。オランダ出身で、ベルギー在住のシンガー・ソングライター、Chantal Acda(シャンタル・アクダ)も、周りから見れば順調に歩んでいると見えたキャリアの中で、一時停滞していたことが、このインタビューで語られている。それは本文を読んでいただくとして、思うようにならない現実と向き合うのはとても辛いことだけど、そんな状況を変えるのも、人との出会いだったりする。

『The Sparkle In Our Flaws(わたしたちの欠点のなかにあるきらめき)』と題された、Chantal Acdaのセカンド作。今作で初めて日本で流通されることになり、これまで彼女が関わってきた、SleepingdogやTrue Bypassのファンとしては感慨もひとしお。今作は、前作「Let Your Hands Be My Guide」も参加している、Peter Broderick(ピーター・ブロデリック)と、ルー・リードやトム・ウェイツらとの仕事で知られる、アメリカ人マルチ・インストゥルメンタリスト、Shahzad Ismaily(シャザード・イズマイリー)が全面サポートし、直感で察してくれるような寛容さのあるサウンドの中で、よりChantal Acdaが伸びやかに歌う自由さを獲得しているのが聴き手にも伝わって来る素晴らしい内容に仕上がっている。

他にも、Heather Woods Broderick(ヘザー・ウッズ・ブロデリック)、Valgeir Sigurdsson(ヴァルゲイル・シグルズソン)、Niels Van Heertum(ニールス・ファン・ヒーアタム)、Eric Thielemans(エリック・ティーレマンス〜Distance, Light & Sky)といった面々も参加しているのですが、とりわけ、Chantal Acdaにとっては、ピーター・ブロデリックとの、目に見えない絆が、作品に深い影響を与え、彼女の持つ才能をより自由に解き放つ道標となっていることが、今回のインタビューからも伺える。

また、このインタビューでは、アルバムタイトルに込められた意味についてや、作品に参加している、ピーター・ブロデリック&シャザード・イズマイリーについても、丁寧に話していただきました。(協力:Lirico

 


 
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Interview:Chantal Acda

まず最初に、「THE SPARKLE IN OUR FLAWS」は、ソロ名義での2作目となりますが、プロジェクト名もしくはグループとしてではなく、あなた自身の名前で作品をリリースすることになったのは、何かきっかけがあったのでしょうか?

ソロ・アルバムの前にいくつかの別々のプロジェクト(sleepingdogやTrue Bypass)でレコードをリリースしたわ。そこではとても強いキャラクターを持ったひとたちとの仕事だったの。音楽的にもとても強い、美しいひとたちだったわ。わたしは彼らの影に隠れて、行き詰まっていたの。そんなときニルス・フラームに出会って、いっしょに演奏する機会があったわ。彼はわたしが行き詰まっていると感じて、いっしょにレコーディングするアイデアを計画し始めたの。わたしはそこにピーター・ブロデリックも一緒に参加してもらいたかったの。彼らはわたしに解放された道を示してくれたわ。そしてわたし自身の音楽をおこなうための平穏も与えてくれた。もう隠れる必要はないの。

「THE SPARKLE IN OUR FLAWS」についてですが、今回の作品は、集まった人々それぞれを尊重し、共に一つの作品を作り上げているように感じました。それは、「THE SPARKLE IN OUR FLAWS」というアルバムタイトルにも繋がっているようにも思うのですが、このタイトルについて説明いただけますか?

わたしたちが誰もがそれぞれが抱える欠点と戦っているように思えることはなんてすばらしいことなんだと気付いたの。ここ数年、わたしはとても悪い場所にいて、わたしのこころは、これ以上ないくらいダークだった。じぶんの闇を受け入れさえすれば、闇は軽くなるのだということを理解するまでしばらく時間が必要だったわ。それはまだ消えていないけど、もう重く感じることはないの。ひとは、時に他人に批判的なものよね。他人に対しても、とりわけ自分自身に対して。わたしはこのアルバムで、自分自身を許したかったの。完璧でなくてもいいんだと。自分が生きる時間を完璧にするんじゃなくて、ただ生き生きとさせるだけ。ピーターとシャザードはわたしの完璧な仲間よ。

ジャケットでのタイトル部分で”FLAWS”が上書きされていますが、何の言葉の上書きなのか、またその意図についても聞かせてください。

ただ「flaws」を間違えたスペルで書いただけよ。まさに「欠陥(flaw)」の象徴ね。

前作は、あなたの歌心がじっくり伝わる、美しい作品で、アレンジも繊細で控えめな感じでしたが、今作はより表現の自由さが際立っている印象を受けました。作品が出来るまでのプロセスはどのようなものだったのでしょうか?

わたしが書いた曲はとても生々しいものだったわ。そのために試作はおこなわなかったし、スタジオにいく前にすべてのソングライティングのプロセスを完全に終えたくなかったの。ピーターとシャザードとわたしは、とても単純でナチュラルなやり方をとったのよ。わたしの頭のなかで聞こえるものが少し導いてくれたかもしれないわね。ピーターとシャザードは生まれ持った才能を持つミュージシャンで、判断の必要すらなしに音楽の作り方を知っているの。ただその曲と、いっしょにいればよかった。ともに生きて、そしてそれを演奏するだけ。

ふたりのずば抜けてすぐれたミュージシャンたちには、とてもインスパイアされたわ。基礎のレコーディングのあと、何人かにもう少し色をつけてもらうように頼んだの。歩を進めるごとに、他のなにかを、曲や物語が必要としている、と感じるものよ。いつくかすばらしいブラスが加わって、ヴァルゲイル・シグルズソンは彼のより静かなスタイルをそこにブレンドさせてくれたの。まるで絵画のように…。

ヴァルゲイル・シグルズソンはどういった経緯でレコーディングに参加となったのですか?以前あなたはPuzzle Muteson「Theatrics」のレコーディングに参加していますよね?

スリーピングドッグのレコーディングを彼のスタジオで何度か行ったことがあるの。彼はスリーピングドッグの作品を気に入ってくれたわ。だからそれで知り合いになったの。パズル・ミュートソンはお互いの友人だったから、彼の作品に参加するのも自然なことだったわね。

あなたのヴォーカル録音についてもこれまでに比べ変化を感じます。エフェクトの効果を感じる浮遊感あるものから、よりあなたの魅力を解放するような、ストレートに伝わるレコーディングは、ピーター・ブロデリックの作品にも通じるものがあるのですが、彼からの提案はあったのですか?

彼はなにも言ってないし、おこなってはいないわ。ピーターとわたし、うん、それはわたしにとって、とても特別な絆。彼といっしょに歌うとき、わたしは感情的にも完全に自分をさらけ出すことができるの。彼がわたしを解放するためにギフトをくれたんだと思うわ。それは直接ヴォーカルに、はねかえってくるものなの。なぜなら声は感情を映し出すものだから。

あなたに強く影響を与えている、ピーター・ブロデリックや、シャザード・イズマイリーは、どんな人たちですか?

ピーターとは親友になったわ。驚くべき才能の持ち主で、人間的にもとてもすばらしい人よ。彼はそれに気付いていないようだけど、彼は人々の心を開かせるの。たとえ心に大きな鍵がかかっている人でもね。彼はそのなかに入っていくのよ。大きな愛で。レコーディングのあいだ、たくさん笑いもあったけど、深い感情もシェアしあったわ。

シャザード。彼はとてもユニークね。彼と出会えてとてもラッキーだったと思うわ。予定になかったのにも関わらず、彼は前作でギターとベースを弾いてくれた。わたしはなにが起こっているのかわからなかったわ。彼のようなミュージシャンにこれまで会ったことはないわ。とてもスイートで暖かくて、自分ひとりだけで生きているひとよ。レコーディングに到着したとき、彼は世界中を旅したあとで、ムーグとベースとちいさなバッグだけでやってきたのよ。それが彼が必要とするすべてなの。彼は座って聴く。ほんとうに聴く。そういうミュージシャンはそうはいないでしょうね。みんな驚くと思うわ。そして目を閉じて演奏するの。どんな楽器でも彼が触ると、魔法のように音が鳴りはじめるの。ほんとうにすごいわ!

今作は、ドイツのGlitterhouse Recordsからのリリースで、フォーク、カントリー系の老舗レーベルですが、これまでのGizeh Recordsから移られたのはどうしてですか?

Gizeh Recordsには正直いい印象しかないわ。彼らのことはすきだし、いまだにホームのように感じてる。もういっしょに仕事することはないだろうけどね。Glitterhouseとサインしたのはたまには変化が必要だと思うから。新しいチーム、新しいものの見方。それが必ずしも、より良いとは限らないけど…。

これまでどんな音楽に影響を受けてきましたか?

うーん、わたしの影響は沈黙から生まれるの。ランニングにいくとき、じっくりものを考えるとき。もしミュージシャンをひとり選ぶとしたら、マーク・ホリスね。

作品を作る上で大切にしていることはありますか?

呼吸をすること。それが厳しくて慌ただしい生活と折り合いをつける方法ね。それが逃げ道となるの。わたしは音楽で不信感を抱いたひとたちに、暖かいブランケットをあげたいと思っているわ。そこにある魂に安らぎを与えたいわ。

今、気になっている、もしくは今後自身の作品で共演したいと思っている音楽家はいますか?

いまはわたしのまわりにいるひとたちとの組み合わせが理想的だとおもってるわ。でもサム・アミドンとビル・フリーゼルはわたしのリストに入ってる。

今回の作品は、日本でも流通されることが、個人的にすごく嬉しく思います。ぜひあなたのライヴを日本で観れることを期待したいのですが。

日本のみんながこの作品を気に入ってくれて、日本ツアーができたらいいわね。そして日本食は、わたしのお気に入りなの(^^)

 
 

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2015-09-19 | Posted in インタビューComments Closed 

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