Distance, Light & Sky「Casting Nets」〜異なるバックグラウンドの3人が奏でる美しく沁み入る作品

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text : Kenji Terada (PASTEL RECORDS)

 

このところ、ソロとしての活動が活発な、Chantal Acda。昨年末に出たライヴ作品も良かったんですが、それに続き、新たなプロジェクト、Distance,Light & Skyでの作品をドイツのGlitterhouse Recordsよりリリースしました。

どうやらAdam WiltzieとのSleepingdogは、A Winged Victory For The Sullenでの活動が忙しいのか、終わってしまった雰囲気ですが、そんな残念な反面、Chantal Acdaのソロ活動の内容がとても良くって、GIZEH RECORDSから昨年リリースされた、「Let Your Hands Be My Guide」〜ライヴ盤「Live in Dresden」とどれも彼女独特のピュアで色艶ある歌声に聴き惚れてしまう素晴らしい内容です。

今回の、Distance,Light & Skyは、The WalkaboutsのChris Eckmanと、Ultra Eczema、Sub Rosa、そしてmiasmah recordingsからリリースするベルギーのドラマー/パーカッショニストのEric Thielemans、そして、Chantal Acdaのプロジェクト。

The Walkaboutsは、米シアトルのフォーク・ロック・バンドで、フロントマンのChris Eckmanは、割と、ジャンルを超えたアーティストとコラボレーションを行っていて、アフリカのバンドTamikrestとのコラボレーションや、ウィーンのエレクトロニック.デュオToscaのRupert HuberとのL/O/N/Gや、スロウコアの代表的なバンド、コデインやカムでお馴染み、Chris Brokaw、そしてオーストラリア人アーティスト Hugo RaceとのDirtmusicといったプロジェクトにも参加しています。

Eric Thielemansは、過去に、映像作家ジェームズ・ハラーや、サン・ラー・アーケ ストラのリーダーでもあるマーシャル・ アレンともコラボレーションのあるベルギーを代表するドラマー/パーカッショニストといってもいいでしょう。彼の最新作は、2014年にMiasmahからリリースされた「Sprang」で、太鼓、木製〜鉄製の打楽器、スチール・パンなど様々なパーカッションを用いた、自由度の高い実験精神あふれるミニマルな作品は必聴です。ソロ作品を聴いていると、ポピュラーなアーティスト作品にも参加するんだ〜と思ってしまうんですが、Chantal Acdaのライヴ盤でも参加していて、空間を壊さない範囲で巧みに刻む、細やかなブラシ捌きが印象的でした。

ただChris Eckmanとはどういう流れでDistance,Light & Skyを始めたんだろう?個人的には、Chris Eckmanの歌声がちょっと苦手なんですよね。わざとしゃがれ声を絞り出すような歌唱で、聴きようによっては渋いんですが、演歌のこぶしのごとく低くしゃがれ声を出すところは、もう普通に歌えよ!ってツッコミたくなるんですが、とはいえ好みもありますんで、これ以上は控えたいと思います…そんな個人的な感情を差し引いても、Glitterhouseには珍しく、ストレートなカントリー&ブルースロックとは違ったサウンドに空間的に広がりのある、フォーキーな演奏と、ぶれないChantal Acdaの歌唱にぐっと引き込まれてしまいます。

レコーディングは、伝説的プロデューサーPhill BrownとともにプラハのSono Studiosで行なわれました。Phill Brownといえば、Talk Talk「Spirit of Eden」〜Mark Hollisのソロ作でエンジニアとしてその独特の空間美を演出した人物として脱シンセポップに貢献した内の一人と言えるかもしれません。

なんだかんだ苦手のChris Eckmanのバリトン歌唱も、Chantal Acdaのピュアな美しさとともに包まれてゆくうちに、不思議と耳に馴染んでくる。作品のバランス的には、歌を引き立たせるように仕上げていますが、これだけ気持ち良く伸びやかなに歌う人だったかな?なんて思うくらいChantal Acdaの歌唱がたまらなく良い。楽曲の素晴らしさもさることながらに、ダコタ・スイートを思わせる、スローなストロークでリズムを刻むアコーステックギター、心地よいピアノやパーカッションの残響…それらが、かすかな哀しみに染められたメロディーとともに添い合い、とても聞いていて心落ち着く。最初に聴いた印象以上に、聴き進めると実は中身の濃い素晴らしい作品だったのです。

目立ちはしないですが、バックの演奏における空間処理もまた素敵で、Eric Thielemansの控えめな中にも卓越したセンスある演奏もぜひ聴き耳立てて味わっていただきたいです。Chantal Acdaの次の作品は、ぜひPhill Brownに参加してほしいなぁ。

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■ アーティスト:Distance, Light & Sky
■ タイトル:Casting Nets
■ フォーマット:CD
■ レーベル:Glitterhouse Records
■ 品番:WB-16/7
■ ジャンル:フォーク/ロック
■ リリース年:2014年

<収録曲>
01. SON
02. STILL ON THE LOOSE
03. COLD SUMMER WOOD
04. THIS PLACE
05. YOU WERE DONE
06. DISTANCE, LIGHT AND SKY
07. SOULS
08. RIDING SHOTGUN
09. WESTERN AVENUE
10. 50’S SONG

2015-02-08 | Posted in 音楽レビューComments Closed 

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