Memory Drawings「There is No Perfect Place」(Hibernate)~夢のような情緒を描き上げる美しいアンサンブル

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text : Kenji Terada (PASTEL RECORDS)

ピアノの原型ともいわれる、ダルシマー。台形の箱に張られた弦を2本のばちで叩き演奏する打弦楽器ですが、まだまだ日本では馴染みのない楽器かもしれません。ハープのような、それでいて倍音の豊かな残響は本当に美しいのですが、そんなダルシマーを演奏する、モロッコ在住のアメリカ人ダルシマー奏者Joel Hansonを中心に、Hood~The Declining Winterで活動中のRichard Adamsと、Lanterns on the Lakeを始め、Library Tapesや、epic45、Rutger Zuydervelt(Machinefabriek)など多くのアーティストに引っ張りだこのヴァイオリン奏者、Sarah Kempの3人で結成されたのがMemory Drawingsです。

彼らのファーストアルバム「Music For Another Loss」は、Phelan Sheppard、Smile Down Upon UsのメンバーDavid Shepperdも運営に関わる英国のSecond languageレーベルから2012年にリリースされました。

ハンマーダルシマーが導き出すメロディーや、Sarah Kempによるむせび泣くようなヴァイオリンが絡み合い、そしてRichard Adamsがそれらを調和するかのような立ち位置に存在し、ノンビートのゆったりとした、詩的で、叙情的な音楽を聴かせてくれる。まるでジャケットの雰囲気そのままのおぼろげな世界が印象的でした。

そして届けられた、待望のセカンドアルバム。リリース先は、エクスペリメンタル寄りながらも、質の高い作品を多くリリースしているHibernateから。ということでよりアンビエントさと実験的な方向に向かっているのかな?と思いきや、思った以上の聴きやすさでびっくり。今回は前作よりもメンバーが増え、さらに、Joel Hansonが前作にはなかった、ドラムやパーカッションを演奏し、よりバンドサウンド~ポストロック寄りなものになっている。メンバーは前述の3人に加え、元hoodのGareth S Brown(ピアノ)、そして、カナダのマルチ奏者で、Language Of Landscapeというユニットでも作品をリリースしている、Chris Tenz(ギター/バンジョー)、パリの6人組ポストロック・グループ、Farewell Poetryの作品にも参加している、Florence Fawcett(チェロ)らが加わり、サウンドに、より艶があり、美しい厚みを与えている。

にしても予想を良い意味で予想を裏切るキャッチーさである。ある一定のコード展開をループしながら小品集的に作ってゆく手法は、以前と変わっていないような気がするのですが、牧歌的なフォークと神秘性をたたえたダルシマーの音色、そして弦楽器それぞれがファーストにはない、より深いアンサンブルの中で調和を保ち、美しく夢のような情緒を描き上げている。そんなかんじなので、彼らの音楽は、じっくり聴くというスタンスを取っていなくても自然とその調べに気持ちよくぼんやりしてしまう。

そして前作にもあった、ボーナスディスクが、このセカンド作にも最初のプレス200枚に付いていて、
Oren Ambarchiの名作「Grapes From The Estate」や、 Sophie Hutchingsの「Night Sky」などオーストラリアのアーティスト/グループの作品に多く参加しているチェロ奏者Peter Hollo、Sole And The Skyrider Band、 Tokyo Bloodwormに参加し、自身のグループVieo Abiungoや、最近、素晴らしいソロ作品をリリースし、個人的に要チェックのWilliam Ryan Fritchhe、 昨年、今年と美しいドローン作品をリリースしている、Alex Smalley(Olan Mill)と、Simon BaintonSlyによるプロジェクト、Pausal、 hibernate recordingsやDenovali RecordsからリリースしているUKの作曲家/ギタリストBen Chatwinによるソロ・プロジェクトTalvihorros、hibernateのレーベルオーナーJonathan LeesとIsnaj Dui名義でも活動しているKatie EnglishとのThe Sly and Unseen、The boatsやThe Remote Viewerでもお馴染み、Craig TattersallのA New Line (Related)、 Krankyなどから作品をリリースしているアメリカ人アーティストThomas MeluchのプロジェクトBenoit Pioulard、そして最後に、「Music For Another Loss」に続き、美しい歌声を披露しているのが、90年代にBig Hatというグループで活動していたYvonne Bruner。 それぞれのアーティストが、らしい展開で原曲をアレンジしなおし、新たな魅力を提示してくれている。今回も充実の内容です。

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■ アーティスト:Memory Drawings
■ タイトル:There is No Perfect Place
■ フォーマット:2CD
■ レーベル:Hibernate
■ 品番:HB55
■ ジャンル:フォーク/モダンクラシカル/ポストロック
■ リリース年:2014年

<収録曲>
[DISC.1]There Is No Perfect Place
01. Back To The Moment I
02. The Island Of The Day Before
03. Golden Afternoon
04. Then And Now
05. I Could Live Like This Forever
06. There Is A World Without You
07. Coldstream
08. In The House At Midnight
09. There Is No Perfect Place
10. Back To The Moment II

[DISC.2]There Is No Perfect Place – Re-Works And Alternate Versions
01. I Could Live Like This Forever (Cello Version)
By Peter Hollo
02. There Is No Perfect Place
By William Ryan Fritch
03. Back To The Moment II
By Pausal
04. Coldstream
By Talvihorros
05. The Island Of The Day Before
By Sly And Unseen, The
06. In The House At Midnight
By A New Line (Related)
07. I Could Live Like This Forever
By Benoit Pioulard
08. The Island Of The Day Before (Vocal Version)
Vocals and Lyrics By Yvonne Bruner
09. Golden Afternoon (Vocal Version)
Vocals and Lyrics By Yvonne Bruner
10. There Is No Perfect Place (Vocal Version)
Vocals and Lyrics By Yvonne Bruner

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2014年09月17日 | Posted in 音楽レビュー | タグ: , , Comments Closed 

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