James Elkington『Wintres Woma』(Paradise Of Bachelors)


英国出身のギタリスト、James Elkingtonのリリースアナウンスでデビューソロレコードとあって、一瞬えっ?って思ってしまったのですが、彼の長いキャリアの割には、そういえばソロ名義作って今までなかったんだなぁ〜と。James Elkingtonについては、ケンタッキー・ルイスヴィルのギタリスト、Nathan Salsburgとの共演作「Ambsace」のレビューでも触れておりますのでぜひご参照を。

リリースは、「Ambsace」と同じく、ノースカロライナのレーベル、Paradise of Bachelorsより。タイトルの、「Wintres Woma」は古英語で、”Winter of Sound”の意で、James Elkingtonの彼のバリトンヴォーカルと相変わらず素晴らしいギター含め、ハートウォーミングなムードに包まれた素敵な作品に仕上がっています。

朴訥とした歌と反して、彼のギター含め、参加している演奏家の繰り広げる表現力豊かな素晴らしい演奏は、本当にため息が出るほど。90年代にイギリスはロンドンでSophiaのギターリストとして活動し、その後、2000年初頭にアメリカはシカゴに渡りポスト・ロック隆盛期を経た中で、The Zincsのフロント・マンとして2枚の作品をリリースしたあとも、Richard Thompson、Jeff Tweedy 、Steve Gunn、StereolabのLaetitia Sadierと仕事を始め、Nathan Salsburg、そしてルイヴィルの女性シンガソングライター、Joan Shelleyと連なる交流共演とともに、トラッドフォーク、カントリー、アメリカーナといった伝統的でアコースティックな音楽のスタイルの中で自分自身の自然体なスタイルを見出していったことが、このソロ作で伝わってくる深みある演奏によって証明されていると言えるでしょう。

ウィルコのロフトで録音された本作は、The ZincsのメンバーNick Macri(ベース)に、フリージャズシーンを牽引するケン・ヴァンダーマークと共演している、Tim Daisy(パーカッション)、そして、Macie StewartとTomeka Reidのストリングと、シカゴ在住の、インプロジャズシーンで名のある音楽家が参加しているのも興味深いです。

スウィンギーなリズムでスタートする”Make It Up”から、前述の伝統音楽のスタイルを用いながらも、彼らの演奏は、アルバムを通じ、様々な情景を映して行きます。インプロに長けた参加奏者の合間合間のインタープレイ、時にモリコーネを思わせる幻想的なアレンジの繊細さにうっとりとさせる刺激をもらいながらも、透明感あるJames Elkingtonのギターの美しさと素朴な味を持った歌声に、ため息ものの心地よさを感じることでしょう。ぜひNathan Salsburgとともにますます注目していただきたいギタリスト/音楽家です。

<収録曲>
01. Make It Up
02. Hollow In Your House
03. Wading The Vapors
04. Grief Is Not Coming
05. When I Am Slow
06. The Parting Glass
07. The Hermit Census
08. Greatness Yet To Come
09. Sister Of Mine
10. My Trade In Sun Tears
11. Any Afternoon

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